TSUKUCOMM-29
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も医学系の人も、みんながそれを見ることができることによって、芸術に対する考えが変わってくると思います。美術館があればいつでも本物に触れることができます。本物は、画像で見るのとは違って、五感すべてに語りかけてきますから。それはすごく大事なことです。玉川:世界的に見れば国際的な大きな大学には、必ず美術館や博物館がありますからね。ところで、筑波大学では、12月に「新進芸術家育成交流作品展 ファインアート・ユニバーシアード」を大学ギャラリーで開催します。文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」の採択を受けた企画で、今回が第3回展。国内と国外合わせて30校から推薦してもらった作品を展示します。それと、今年は、戦後70周年でしょう。広島市立大学芸術学部でやっている、被爆者や被爆2世、3世の肖像画を描く「光の肖像」というプロジェクトの作品も、ファインアートの一部の展示として紹介します。ぜひ見にいらしてください。藪野:楽しみにしています。メージがあります。すごく興味があるのは、今後、どういう形で伝統が生きてくるかということです。玉川:筑波大学は一昨年開学40周年を迎え、その記念事業をする際に、「筑波大学開学40+101周年記念事業」と命名しました。古い伝統を大切にしながらも、進取の気迫というか、新しいものに対してチャレンジする精神を持ってほしいという想いが込められています。両方がないまぜになって、うまくいきさえすれば、いい大学になると思います。藪野:それは素晴らしいことです。早稲田大学は、大隈重信や小野梓ら先人の心意気と若者への情熱という遺産で成り立っている大学です。だから、先人のやってきたことを語り継いでいくことを大切にしています。玉川:大隈重信像や大隈講堂は早稲田大学の精神的シンボルになっていますよね。総合大学にはそうした精神的シンボルが必要だということで、本学では、大学会館前の広場に、教育大の庭にあった朝倉文夫作の嘉納治五郎像を建てました。藪野:早稲田大学には、會津八一記念博物館や演劇博物館があって精神的シンボルとして機能していると思います。自分が今、美術館の館長をやっているからではありませんが、筑波大学もぜひ美術館を作ってほしい。その美術館は、精神的な拠り所になるでしょうし、理工系の人ていきました。それから、留学すると現地の友人が増えますよね。それは、人生において大きなことです。玉川:言葉の壁を心配している学生もいるようですが、言葉はたいしてできなくても、友人はできるし、生活するのに問題はないですよね。大学の講義をうけるとなると大変なので、ある程度できるに越したことはありませんが、僕の場合は芸術だから困りませんでした。藪野:僕は、英語もスペイン語もフランス語も通じないところにも行きましたが、絵を描けば伝わりました。そういう時、絵描きっていいですね(笑)。ところで最近は、高校生くらいから留学する人もいるようだけれど、あまり早くから行く必要はないと思います。アイデンティティがなくなってしまうから。大学生になると批判することもできるし、自分で物を考えることができる。大学時代が、留学するのに一番いい時期だと思います。玉川:最後に、筑波大学に一言お願いします。藪野:筑波大学は、東京師範学校、東京高等師範学校、東京文理科大学、東京教育大学と、有数の古い伝統がありますね。そして、伝統がありながら、新しいものに対して、拒否反応が少ないというイ筑波大学に美術館をTSUKUBA COMMUNICATIONS11

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