TSUKUCOMM-29
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あり、その外側には、20世紀前半にモダニズム建築を生み出したバウハウス大学があります。前者は「ドイツ古典主義の都」として1998年に、後者は「ワイマールとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」として1996年に、それぞれ世界遺産に登録されています。ベルリンのような大都市ならともかく、小さな町の中に、対照的な顔をもつ2つの世界遺産が共存しているというのは、極めて稀有な例です。 ドイツ古典主義が興った背景には、当時のヨーロッパにおけるドイツの状況があります。ドイツは小さな国に分かれており、政治や経済の面で後進国として扱われていました。その遅れをカバーするために、哲学や文学などの内面的な考察を伴う文化を発展させたのです。その際、国民の意識を喚起しようと、内面性を託すシンボルとして宗教的で壮大な建築物をつくったのでした。それらは現代においても、誰もが分 ドイツ中部に位置する人口6万数千人の小さな都市ワイマールには、2つの世界遺産があります。18世紀末から19世紀初めの文学や思想をけん引したドイツ古典主義の都と、20世紀前半のデザイン界に大きな影響を与えた美術・建築の総合学校バウハウス。新旧を代表する文化は同じ町で花開き、それぞれの栄華を偲ばせる文化財が共存しています。カントの弟子であり、ドイツ古典主義の時代にワイマールで活躍した哲学者ヘルダーを研究する杉山卓史助教(芸術系)に、哲学における「美」の捉え方や、世界遺産としてのワイマールの価値について伺いました。対照的な2つの世界遺産 ワイマールの中心市街地には、ゲーテやシラーなど多くの文化人が活躍した、18世紀末から19世紀初めの建物や公園がと筑波大学世界遺産特集|シリーズUniversity of Tsukuba 世界の文化遺産を守るための研究対象として、筑波大学は多くの世界遺産とのつながりがあります。文化財の価値や保存活動の一端を、現地でのフィールドワークの様子なども交えて紹介していきます。File#5古典主義の都ワイマール/バウハウスとその関連遺産群❶ バウハウス博物館❷ ワイマール城❸ 国民劇場前のゲーテとシラーの像❹ 大公家の墓(ゲーテとシラーの墓)❺ アンナ・アマーリア大公紀図書館❶❷❸❹❺杉山 卓史 助教TSUKUBA COMMUNICATIONS12

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