TSUKUCOMM-29
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不十分。読み、訳し、そして考える、それが最も大切な学びです。授業の冒頭、塚田先生は「文字学」について話し始めました。生徒にとっては初めて聞く学問です。各地で出土する木簡や土器、甲骨に刻まれた文字を分析し、他の史料と照らしながら文字の成り立ちや意味づけの根拠を解明していくプロセスや、私たちが普段何げなく使っている漢字が持つ、思いがけない意味やストーリーを紹介します。最近になって新たに発見されることや、未だに分からないこともたくさんある興味深い学問ですが、この分野を志す研究者が少なく、なかな目です。文系・理系のクラス分けはありませんので、どのクラスも両方が混じっており、受験目的で選択する生徒も、漢文が好きで選択する生徒もいます。1年生で句法や訓読を徹底的に学び、3年生では文学としての漢文をじっくりと読んでいきます。教科書に現代語訳はなく、代わりに、オリジナルのプリントが配られます。このプリントには、現代語訳と、読解のための設問があり、この設問をヒントに、物語としての理解を深めます。授業中、教室の中は決して静かではありません。先生もあまり構わずに授業を進めます。生徒を大人として扱っているからです。それでも先生の問いかけに対して、生徒は的確に答え、その根拠や意見もきちんと述べます。期待した答えとは異なることもありますが、それも間違っているわけではなく、むしろ新鮮な考え方にしばしば驚かされます。生徒同士で議論が白熱することもあります。物語にはいろいろな解釈があって良いのです。一方的に伝えるだけでは授業として3年生の授業で使う教材は司馬遷の「史記」。紀元前に編纂された壮大な中国の歴史書です。その中の、戦国時代に繰り広げられた勢力争いの物語を読み解いていきます。戦乱の世でありながら、諸子百家といわれるさまざまな思想家が活躍した時代でもあり、塚田先生のお気に入りの題材の一つです。自分が面白いと思えるもの、自信を持って教えられるものを教材にすることが、国語科では大切なポイントです。附属高校には6名の国語科教師がいますが、漢文の担当は塚田先生ひとりです。漢文は1年生では必修、3年生は選択科1952年、新潟県生まれ。東京教育大学卒業。埼玉県立熊谷高等学校、同新座北高等学校勤務を経て、現職。全国漢文教育学会常任理事。高等学校用国語教科書(大修館書店)の編集に長年携わる。著書に『新人教師のための漢文指導入門講座』(大修館書店)、共著に『漢文名作選[第2集]1 古代の思想』(大修館書店)、共編に『現代漢語例解事典』(小学館)がある。筑波大学附属高等学校塚つかだ田 勝かつろう郎 教論本学には11の附属学校があります。それぞれの分野でわが国の教育をリードしており、全国でも有名な先生たちが大勢います。各学校で活躍する名物先生を紹介いたします。19VOL.19 名物先生登場!附属学校のTSUKUBA COMMUNICATIONS18

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