TSUKUCOMM-29
5/36

永田:頭の柔らかい若い人に(笑)。そういう学生を、僕らは育てなきゃいけません。化学工学の学生を減らすという話が出ましたが、僕のやってきた生物学だって、もう終わりなんですよ。大きな問題はもうクリアされてしまった。ゲノムもITの世界になって、計算上は解明されています。これから実証していく必要はあるし、どうしても計算に乗らないものを見つければ、それが発見につながるのでしょうけれど。小林:材料設計も、有機化学の経験的な合成ではなく、AI(人工知能)で行う時代になってきました。アメリカでは、コンピューター・シミュレーションを駆使して、優れた機能を持つ新材料を生み出す「マテリアル・ゲノム」という取り組みを開始しています。これから日本が生き残っていくためには、シミュレーションもわかり、かつ高分子材料など他の高度分野の知識も持っているというような、「ハイブリッド人材」の育成に相当力を入れていく必要があります。のは、「AとBを足してCができた」という程度のものがほとんどです。「Google X」※6のトップを務めるアストロ・テラー氏と話した時に、彼は「10%を変えるのではなく、10倍変わるものを考えなければいけない」と言っていました。「たかだか10%コストダウンするようなことはほとんど意味がない」ということです。こういう考えを投げかけていかないと組織はなかなか変わらない。「5%のコストダウン、よくぞやった」って、偉くなっていくのが日本ですから(笑)。永田:その通りですね。小林:極めて破壊的なイノベーションをやろうという雰囲気を作っていかないといけないのだと思います。経済界も政府もようやく気がついて、「やらなければ」という雰囲気が出てきましたが、アメリカやドイツの亜流ではなく、日本流にバーチャルなテクノロジーと実際のものづくりをどうハイブリッド化するか。これをぜひ学生さんにやってもらいたいですね。既存のものを乗り越えなければならない超一流のハッカーも育てられません。小林:今、日本の教育で最も必要なのは、情報通信技術(ICT)の分野の人間を、どう教育して増やしていくかということです。逆に、極端なことを言えば、サイロ状※4になっている化学工学などは、もうちょっと減らしてもいいとさえ思います。永田:筑波大学の工学系は建学の時から情報工学が中心でした。最初から今の時代を見据えた大学のつくりをしてきました。ただ、全く新しい発想のシステムを作るというようなことに、どれだけの人が取り組んでいるかというとちょっと不安です。あるものを応用してゲームを作るとか、あるものを転用するとか、そういうことには十分長けていると思います。小林:なぜイスラエルはスタートアップができて、日本ではできないか※5。人口780万人弱のイスラエルからは、極めて斬新なアイデアが次々に生まれてきますが、一億人以上もいる日本から生まれるTSUKUBA COMMUNICATIONS05

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る