TSUKUCOMM-30
14/32

る手を伸ばすようになります。テーマによっては、遠方に住む親戚なども進んで協力してくれます。教室に姿はありませんが、学びを支える心強い応援団の存在。生徒にとっては、言葉以上にインパクトのある、大切な教材なのです。 もう一つ、欠かせない教材がジオラマです。電子黒板などが普及して、授業にもいろいろな写真や動画を取り入れることができるようになりました。しかし平面の情報で伝わることには限りがあります。それを補うのがジオラマ。藻利先生は、段ボールや発泡スチロール、紙粘土にティッシュペーパーなど、どこにでも間をかけない工夫をしています。空書といって、文字や形を空間に描いて示したりもします。できるだけ生徒と顔を合わせ、対話を途切れさせないようにするためです。耳から無意識に入ってくる情報が少ない生徒たちの、雑学知識や語彙を増やす一助になるようにと、雑談も意識的に盛り込みます。生徒たちも、全員が積極的に発言し、互いに意見を交わします。授業の最後にまとめてノートをとる時間を設けているので、五感をフル活用して授業に集中することができます。藻利先生の授業には、たくさんの人が関わっています。今日の授業では、地元の農家へのインタビューや、生徒の保護者へのアンケートの結果が紹介されました。野菜作りの苦労や喜び、野菜を買うときに気を付けていることなど、地域に根を張って生きる人々の姿や思いが伝わってきます。始めのうちは、土に触ることをためらっていたり、野菜は苦手だと言って避けていた生徒も、そういった話を聞くにつれ、恐る恐関東地方と近郊農業について学ぶ中学2年生の地理の授業。そこには手で触れる教材がたくさん登場します。関東ローム層の赤土や、地元の農家が届けてくれた採れたての野菜など、自分の眼で見て、匂いを嗅ぎ、手で触る、その感覚を通じて、自分たちが生活する地域の特徴を理解していきます。身近な社会のことを丁寧に掘り下げ、具体的にイメージできるようにすると、それが他の地域や世界との関連付けへの足がかりとなり、視野が広がります。授業での板書は、予め用意しておいた地図やカードを貼るなど、なるべく時1955年、愛媛県生まれ。新潟大学教育学部卒業後、愛媛県松山市内の小学校教諭となる。1982年より、筑波大学附属聴覚特別支援学校に赴任し、歯科技工科に21年間勤める。その間、担任、一般科目(国語・社会)、発音・発語指導等を担当。現在は、中学部で社会科指導とバレーボール部顧問を務めている。筑波大学附属聴覚特別支援学校藻もうり利 國くにえ恵 教諭本学には11の附属学校があります。それぞれの分野でわが国の教育をリードしており、全国でも有名な先生たちが大勢います。各学校で活躍する名物先生を紹介いたします。19VOL.19 名物先生登場!附属学校のTSUKUBA COMMUNICATIONS14

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る