TSUKUCOMM-31
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大型プロジェクトで進める基礎研究 生命圏科学学術センターでは、生命の発生と分類を探る「生命の樹プロジェクト」と微生物の役割や相互作用を究明する「集団微生物制御プロジェクト」などの大型プロジェクトが進められています。 「生命の樹プロジェクト」は、2014年度に数理物質系や連携大学院も含めた部局横断型のリサーチユニットに認定された「生命の樹」をベースにしたプロジェクトです。生物の進化を表す系統樹の幹となる生命原理を探究する、非常に根源的な研究です。このような研究では一般に、モデル生物(マウスや線虫など遺伝子配列が完全に解読されているもの)を対象にします。しかし現実の生物系は多様な生物で構成されており、モデル生物だけでは十分に説明ができません。非モデル生物についてもデータを集め、生命の樹の太い幹の本質に迫ろうとしています。 科学技術振興機構の創造科学技術推進事業(ERATO)に採択され、2016年度から本格的に始動する「集団微生物制御プロジェクト」は、集団としての微生物の働きを調べるものです。カビやバクテリア、ウィルスなどの微生物には個々に、化合物を産生したり分解したりする特有の代謝機能があります。実際には、いろいろな微生物が集団(バイオフィルム)となって社会が形成され、その中で果たす役割や相互作用があります。そのような集団の構成員としての微生物の機能や形成メカニズムを解明していきます。「オール生命環境系」の旗印に 「生命科学、生物資源科学、環境科学、さらに文系も含めた文理融合智を結集し、地球と人類の持続可能な社会の構築に貢献する」という大きな目的を掲げた地球・人類共生科学研究機構。生物の発生や系統分類から地球環境まで、幅広い研究領域をカバーする本学生命環境系の力をもってすれば、決して大げさな目的ではありません。 この機構は、筑波大学の研究力強化実現構想の中で、本学の得意分野をより強化するために設置された3つの学術拠点のうちの一つです。設立にあたって、基礎研究を行う生命圏科学学術センターと、社会還元型研究を推進する生命環境開発研究センターが新設され、既存のアイソトープ環境動態研究センターを構成する生命環境系教員で作る組織を加えた3つを束ねる形で構成されています。基礎研究の成果を社会実装に結び付けることを意識し、世界トップレベルの研究拠点を目指してオール生命環境系で取り組む姿勢があらわれています。 また、災害時の人々の行動や心理、都市計画、創薬なども、期待されるアウトプットには欠かせない研究分野です。生命環境の枠にとらわれず、学内の智を総合的に活用していく研究体制を整えようとしています。学内組織紹介地球・人類共生科学研究機構研究力強化の一環として2014年に設置された地球・人類共生科学研究機構には、筑波大学の強みの一つである生命科学・環境科学分野の研究が集約されています。発足間もない組織ながら、この分野における世界トップレベルの研究拠点となるべく、基礎研究から国際産学連携も含めた社会実装までを視野に入れた、本学ならではのユニークな研究活動が進められています。筑波キャンパスは、東西約1㎞、南北約4㎞の広大なキャンパス(東京ディズニーリゾートの面積の約2.4倍)です。広いキャンパスにはさまざまな教育・研究組織があります。その組織や施設がどのように設置され、どのようなことをしているかを紹介いたします。Institute of Life and Environmental Sciences, University of TsukubaIntroduce松本 宏 機構長TSUKUBA COMMUNICATIONS12

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