TSUKUCOMM-31
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数理物質系の中村潤児教授、近藤剛弘准教授、郭東輝研究員らは、レアメタルの白金に代わる燃料電池炭素触媒の活性点を形成する窒素種を特定し、サイエンス誌に発表しました。燃料電池は水素と酸素から水を生成する際に生じるエネルギーを電気として取り出す発電装置です。発電時に温室効果ガスの二酸化炭素や有毒ガスを排出せず、化石燃料を燃焼させる従来の発電システムに比べて発電効率が高いなどの優れた特徴をもっています。しかし、燃料電池の化学反応を促進する触媒材料として、高価で希少なレアメタルである白金を使用していることが、燃料電池の普及を妨げる要因の一つとなっています。中村教授らの研究グループは、白金に代わる安価で豊富な材料として炭素材料に着目しました。これまで、炭素材料に窒素原子を導入すると白金触媒に代わりうる炭素触媒(窒素ドープ炭素触媒)が実現できる可能性が知られていました。ただし、触媒機能をもたらす部位(触媒活性点)が未解明であることから、性能が白金触媒に匹敵する炭素触媒の開発が遅れていました。中村教授らは、今回、窒素ドープ炭素触媒の活性点を形成する窒素種(ピリジン型窒素)を特定することに成功しました。この発見により、炭素触媒を設計するにあたってはピリジン型窒素を適宜導入するという指針が明確になりました。今後、高価で希少な白金に代わる燃料電池触媒の開発が加速され、燃料電池の本格普及が早まるものと期待されます。レアメタル白金に代わる燃料電池触媒開発につながる成果を発表!AAAS(アメリカ科学振興協会)2016年次総会参加本学は、海外の研究関係機関とのネットワーク構築を目指して、2月11~15日、ワシントンDCにて行われたAAAS2016年次総会に参加し、ブース出展と北海道大学と共同での講演会などを行いました。このイベントは、サイエンス誌の発行元であるアメリカ科学振興協会が毎年行っているもので、世界中から研究者、エンジニア、教員、ジャーナリストら約5000人の参加者を集めるサイエンスコミュニケーションの祭典です。ブースには、三谷純教授(システム情報系)提供の型紙から作成した立体折り紙を来場者と作る体験コーナーを設置し、コンピュータグラフィックによるバーチャルな造形物を折り紙で具現化するという技術研究を紹介しました。1枚の紙から球体ができる工程は大変注目を集め、本学の研究や国際的な取り組みなどを世界に紹介するよいきっかけになりました。また、講演会では、「神経科学と数学の合わせ技による心の動きの解明:攻撃的行動から経済判断まで」のテーマの下、国際テニュアトラック教員の高橋阿貴助教(人間系)や岡本正洋助教(体育系)らが発表を行いました。▲ (手前)中村潤児教授 (左)郭東輝研究員 (右)近藤剛弘准教授▲「Family Science Day」のブース内体験コーナーの様子▲高橋阿貴助教(人間系)▲岡本正洋助教(体育系)※学年・所属は2016年3月現在TSUKUBA COMMUNICATIONS21

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