TSUKUCOMM-31
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いてメロディーを創作するのですか?それとも、頭に浮かんだメロディーを様式に合わせて整えていくのですか?川:僕が音楽をプロフェッショナルでやっていこうという時期と、コンピュータが音楽制作の現場で使われるようになった時期がちょうど同じでしたので、最初からコンピュータを使って作曲をしていました。家一軒買えるくらいの高価なもので、まだ日本に数台しかなかったオーストラリア製のフェアライトコンピュータという音楽用コンピュータをレンタルして使っていました。「地球大紀行」も、「まずフェアライトコンピュータでイメージを定着させ、NHKにプレゼンテーションをして、了承されたら、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバー達が演奏できるように譜面にする」という作業の繰り返しでした。本学メッセージソング「IMAGINE THE FUTURE.~未来を想え」稲垣:筑波大学のメッセージソング「IMAGINE THE FUTURE.~未来を想え」を作曲していただいたことは、非常にありがたいことです。筑波大学は「新構想大学」です。キャンパスを囲む塀がない、誰でも自由に入れる社会に開かれた大学という形で登場し、いろいろな面で「開かとを覚えています。稲垣:「地球大紀行」とぴったりするところがありますね。川:そうですね。番組には例えば「大地溝帯」など、毎回テーマがあるんですけど、それができるまでに何十万年もかかっているものだというような、テーマのバックボーンを理解して、非常に壮大なものだということを想定しながら音を選んだり、音が流れた時にどういうイメージを抱いてほしいかを意識して曲づくりしていました。大学で学んだことは、そういうことにとても役立ったと思います。稲垣:どのような経緯で、音楽の道に進まれたのですか?川:ピアノは3歳から始め、中学生の頃にはもう作曲をしていました。高校時代にはたぶん100曲以上作ったと思います。大学に入るとすぐに「筑波音楽協会」という軽音楽サークルに入って、趣味として楽しんでいたんですけれど、だんだん本格的になっていって…。そんな頃に、当時は、まだ舞踏の学生集団的なものだった山海塾の人たちと出会い、一緒に作品を作るようになりました。そうするうちに、その作品を見たテレビ局やレコード会社のディレクターからオファーが来るようになり、自然な流れで作曲家になったという感じです。稲垣:作曲する時には、楽曲の様式に基づ稲垣:筑波大学のブランディングプロジェクトや、本学の自由科目「未来構想大学講座」の講師などで、いつも大変お世話になっております。川さんは、作曲家かつ映像プロデューサーとしてご活躍で、40年近く山海塾※の全ての作品に携わっていらっしゃいます。私にとって印象深い曲といえば、NHKスペシャル「地球大紀行」のメインテーマ『The Miracle Planet』があります。この曲は、1993年のJASRAC賞国際賞を受賞されましたね。川:はい。その年に、世界で最も多く曲を使われた日本人の作曲家という賞をいただきました。稲垣:「地球大紀行」の第一回放送の冒頭でこの曲が流れた時、「なんと素晴らしい」と感動したことをよく覚えています。この番組の音楽制作を全て担当されたそうですが、音楽は、番組のシーンに合わせてお作りになったのですか?川:はい。毎月毎月送られてくるラッシュ(映像の試写)を見ながら、情景描写をより膨らませる曲を目指して作っていました。あの1年間は本当に大変でした。稲垣:川さんは、第一学群自然学類のご出身だそうですね。ご専攻は何ですか?川:地球科学です。筑波山の方の洞窟に入って地質を調べたりとか、海岸に行って化石を掘り起こしたりとか…。長靴を履いて、いろいろなところを調査したこ川 洋一郎氏1957年香川県 生まれ1976年筑波大学 第一学群自然学類 入学 在学中から「舞踏グループ山海塾」の活動に参加以来30年間山海塾全作品の音楽制作を行う1987年NHKスペシャル「地球大紀行」の音楽を作曲(JASRAC国際賞受賞) 他テレビ番組の音楽を多数手掛ける2010年筑波大学メッセージソング「IMAGINE THE FUTURE.~未来を想え」 作曲稲垣 敏之副学長1952年   京都府 生まれ1974年   京都大学工学部機械系学科 卒業1979年   京都大学大学院工学研究科精密工学専攻単位取得退学         ヒューストン大学Post Doc 7月 工学博士(京都大学)1980年   筑波大学電子・情報工学系講師1987年   筑波大学電子・情報工学系助教授1990-1991年 カッセル大学客員研究員(フンボルト財団)1994年 筑波大学電子・情報工学系教授2011年   筑波大学システム情報系教授2012年   筑波大学大学院システム情報工学研究科長2015年    筑波大学副学長・理事MEMBER PROFILE作曲家・映像プロデューサーNPO法人 山海塾理事理事※山海塾:1975年に主宰・天児牛大によって創設された舞踏カンパニー。パリ市立劇場を創作活動の本拠地とし、ヨーロッパ、北米、中南米、アジア、オセアニアなど、 世界45カ国のべ700都市以上でワールドツアーを行い、あらゆる文化圏で高い評価を得ている。TSUKUBA COMMUNICATIONS03

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