TSUKUCOMM-32
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髙尾教諭は、かつて人事交流で本校に勤務していて、一旦派遣元の学校に帰ったものの、公立の学校を退職して再度本校の採用となりました。こうした教員を本校では「出戻り教員」と呼んでいます。「出戻り教員」というと聞こえが悪い印象ですが、彼女の場合は、今年度の新規採用者でありながらも即戦力となる頼もしい存在です。特に知的障害を伴う自閉症児の実態を分析し、適切な指導計画を立案することが得意で、若手教員への(情け容赦の無い?)アドバイスも的確です。セクハラ紛いの表現はご勘弁をと懇願したのですが・・・、本文推敲中に本人から「出戻りで花婿募集中」と紹介してくれとの要望が出されました。こんなお茶目さも含め、彼女は本校の将来の名物教員候補の一人であることは間違いありません。雷坂 浩之 副校長可能性を少しずつ広げていけるように、指導計画をしっかり作成します。さらに、子どもの成長に伴って、その計画をフレキシブルに変えていくことも必要です。たった4人のクラスとはいえ、丁寧に指導しようとすればするほど、子どもとの関係は濃密になり、体力・気力も消耗しますが、それが特別支援学校の魅力でもあります。高校の理科の先生を目指していた髙尾先生。ところが、教員になって最初に配属されたのは養護学校でした。当時は、障害のある子どもに対しては「育てる」というよりは「世話をする」という接し方が一般的でしたが、指導してくれた先輩教員は、自閉症の子どもがどんな風に考えているのか、思いや気持ちに寄り添う教育を実践していました。その熱心な姿勢に影響を受け、戸惑いながらも、次第に子どもとの関わりや成長を見守ることにやりがいを感じるようになりました。ベテランになった今でも、子どもから学ぶことは尽きません。特別支援学校では、保護者とのコミュニケーションを密にして、子どもの日々の生活を共有することがとても重要です。卒業後の進路や将来の就労まで意識しながら、時には厳しいアドバイスも伝えなくてはなりません。その毅然とした態度とバイタリティが、保護者や同僚の先生からの絶大な信頼につながっています。自分は決して優しい先生ではないと笑う髙尾先生ですが、とても温かい眼差しで子どもたちの成長を見守り続けています。子どもとの接し方は先生によって様々ですし、他学年の子どもたちとの交流や、校外へ出かける機会もできるだけたくさん作っています。それが、人との関わり方の多様性を知るきかっけにもなります。多くの自閉症児は、言葉を発すること自体に困難を抱えています。人とコミュニケーションをとりたくても、言葉が出ないのです。それぞれの子どもが、どのくらい言葉を知っているのか、正しく理解できているかを見極めることも難しい、それでも髙尾先生は、言葉を話すことをあきらめずにいたいと話します。言葉を獲得し、表現すること、それをつらい訓練ではなく楽しく習得していけるよう、工夫を凝らしながら子どもたちに働きかけます。決まった方法やマニュアルはありません。子どもの状態に応じて、活動の内容や教材の使い方、時間配分を柔軟に展開していくのは、まさに職人技ともいうべきものです。一言に自閉症といっても、人によって症状は様々です。同じ学年でも、学習のレベルや指導方法が一人一人異なります。けれども障害があるから教えられないということはありません。子どもを理解し、興味関心の在りかや習熟度を的確に捉えて、TSUKUBACOMMUNICATIONS11

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