TSUKUCOMM-33
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肥沼先生が、本校に赴任した歓迎会でのこと。自己紹介をするときに、ある”人”を連れてきました。それは、かれの無二の”親友”、けんちゃん。彼を膝の上に乗せ、話し始めました。なんと”彼”は腹話術の相方でした。これを使いながら、生徒が興味を持って授業に臨めるようにするとのこと。一同吃驚です。しかし、肥沼先生の授業に対する姿勢の一端を見た思いがします。それからの彼の英語科教育における活躍は目覚ましいものでした。本校の英語科全ての教員がそうであるように、日本一の英語教員、といっても過言ではない教師になってくれています。全国から英語教育研修会の講師依頼は引きも切らず、それでも決して本業の授業を疎かにすることなく、全力投球です。このように様々な活躍をしながら、綺羅星の如くの附属中学校教師集団にあって、もうベテランの域に達しています。本校の中核となる存在として、益々その輝きを増しています。ご自身が、本校を教員として卒業するまで、輝き続けられることを、副校長としても期待しています。小山 浩 副校長とくさんな学習内容というよりは、一つのことを少しずつ形を変えながら繰り返し行い、退屈せずに確実に身につけられるような構成です。読む・書くは自宅でもできますから、授業では聞く・話す活動が中心です。生徒との対話や一人一人の発音に十分な時間を取るために、空白の時間を作らないよう、指導案を事前にしっかり頭に叩き込みます。そしてどんな時でも、プロの証としてキリリとネクタイを締め、生徒の前に立ちます。肥沼先生は校内でもうひとつの重大な役割を担っています。それは学校行事のビデオ撮影です。趣味の映画鑑賞が高じて、自分でも撮影するようになり、今では運動会や文化祭などの映像記録をすべて任されています。生徒のことをよく知っているからこそ撮れる一瞬が満載です。膨大な撮影データを編集し、テロップを入れて、ドキュメント映画さながらに仕上げます。それらは学年ごとに数枚のディスクにまとめ、制作秘話などを記したプロダクションノートとともにパッケージにして卒業の際に生徒に配ります。生徒にとっては最高の記念でしょう。撮影技術の研究にも余念がありません。中学校の先生になろうと決めたのは、中学3年生の頃。熱心に生徒と向き合う先生と出会ったことと、生徒会長として人前で話すことに快感を覚えたのが、そのきっか肥沼先生の授業は、とにかくスピード感に溢れていて、集中力が途切れることがありません。このスピード感は、先生と生徒との息が合って生まれるものです。それには、双方の信頼関係が不可欠です。教員を続けながら大学院に通い、修士論文で研究したテーマが「名人の授業を科学する」。上手な授業で評判の先生は全国にいます。その人たちの授業を分析したところ、教えるテクニック以前に、生徒たちとの良い関係を築くことに腐心していることがわかりました。早速、自分も同じようにやってみると、確かに授業の雰囲気が変わりました。できるだけ早く生徒全員の顔と名前を憶え、生徒に何を達成してほしいか、そのためにどんなふうに授業に臨んでほしいか、そういう思いを、他の教員も一緒に、学年全体に伝えます。顔と名前を一致させるのがだんだん難しくなってきたと苦笑しながらも、生徒の心を掴む努力は惜しみません。授業中は余計な話をすることはほとんどありませんが、帰りの会では日常で遭遇した小さな出来事などを紹介し、生徒と語り合います。それを通して、お互いに、授業中とは別の側面を発見することができます。これも生徒との人間関係を築く大事な時間です。こういった何気ないやり取りや生徒たちの反応を書きためたものを冊子にして、先生たちに配っています。授業はテンポよく進みますが、盛りだけでした。けれども英語は大の苦手科目。ところが大学に入ってから英語を学んでみると、それまでわからなかったことが理解できるようになりました。その体験が、肥沼先生を英語教師の道へと導いたのでした。学生時代に1年間、アメリカに国費留学し、英語を話すことに対する抵抗感も消えました。英語はあらゆる分野に関連する科目。その先にもっともっと大きな世界が広がっていることも、英語を教える魅力です。なりたかった中学校の先生になり、生徒の成長を見守る日々は、何にも代え難い幸せです。TSUKUBA COMMUNICATIONS11

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