TSUKUCOMM-33
8/28

PROFILE足立 佳菜子 氏独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部森林・自然環境グループ自然環境第二チーム 課長1968年  愛知県北名古屋市生まれ1987年  筑波大学第2学群比較文化学類入学1991年  同大学卒業、     ミシガン州立大学大学院(社会学)入学1993年  同大学院(社会学)修了1994年  国際協力機構(当時国際協力事業団)入社、青年海外協力隊事務局、研究所等2008年  中国事務所在外勤務2012年  帰国、調達部2015年~ 現部署OBOGTSUKUBA////////////////KanakoADACHI— 国際協力のスペシャリストの足立さんですが、大学進学時には「比較文化学類」に入学。進学の理由を教えてください。 世界にはたくさん国があるのに、発展する国としない国があって、その差は何だろうということを考えていたときに、「比較文化学類」という学科を見て、これだと思いました。一般的な「文学部」「工学部」ではなく、「第2学群」とか「比較文化学類」は輝いて見えました。ただ、学内には憧れのバドミントン選手がいて、結局そちらに傾倒してバドミントン部一筋の大学生活でした。しかし、卒論では原点に戻り、フィリピンの輸出志向型の成長戦略について研究しました。 卒論に取り組む過程で勉強をやり残してきたことにハタと気づき、社会学を修めようとミシガン州立大学の大学院に進学しました。周りの学生は、学生とは言っても30代以上の社会人経験者が多く、社会経験を元に、明確な問題意識を持っていたので、授業に臨む姿勢も真剣そのもの。必死でついていきました。— 比較文化から社会学、そして環境保全というキャリアは意外な感じがします。 大学院修了後は、国際的な仕事に携わりたいと考え、国際協力機構(以下JICA)に入りました。青年海外協力隊事務局、研究所などに勤務した後、配属されたのが「地球環境部」。JICAの中でもインフラ、エネルギー、教育、保健などの分野別の課題に取り組む「課題部」と呼ばれる部署です。担当することになった生物多様性保全や森林保全などの自然環境保全は、自分の専門分野とはかけ離れているので、大丈夫かしらと戸惑いました。 でも環境の問題って、実は人間の問題なのです。例えば、森林は勝手に減少するのではなくて、人が木を切るから減っていくのです。森林を保全しようと思ったら、木を切らなくてよい生活を保障しなくてはいけない。森林や海洋、湿地などの自然を保全するためにはそこに暮らす人々や社会にアプローチしていかなくてはならない。それには社会学の視点が必要です。「住民に対してどうアプローチするか」「政府に対してどう働きかけるか」「制度をどう作っていくか」を考え、実行することが重要なのです。これならば自分の知識や経験が生かせると思いました。— 途上国支援の魅力と、難しいと思うことは何でしょう。 ケニアで社会林業の住民グループ支援プロジェクトを視察に行った時のことです。プロジェクトで支援している地元農民の女性たちが畑の横の空き地で、手「途上国で『なんとかしよう』と奮闘している人に出会えるのが、この仕事の喜びです」という足立さん。その土地の人々の暮らしを大切にして、「何が自分にできるのか」という視点でグローバルな課題解決に取り組んでいます。 気候変動は世界的な課題で、その対策に森林保全が重要だというのが国際的な認識です。REDD(Reducing Emissions from Defor -estation and Forest Degradation in Developing Countries)+は、途上国が、木材や燃料の調達、農地開発などのために自国の豊かな熱帯林を伐採することを抑制するために、国際社会が経済的インセンティブを提供する取り組みです。国連機関やJICAなどの各国援助機関では、途上国政府がREDD+を導入するための計画、政策・制度の策定や、森林資源のモニタリング、人材育成などを支援しています。REDD+推進のためには政府や援助機関のみならず、民間企業やNGO、研究機関などの協力も不可欠との考えの下、JICAが中心となって、オールジャパンでREDD+に取り組むプラットフォームを2014年に立ち上げました。 足立さんは、中南米・アフリカ・中近東で行われる自然環境保全のプロジェクトの立案・進捗管理・評価などの総括を担当していて、REDD+事業も支援しています。重要な局面では、政府機関の意思決定者に理解を求めるため交渉や報告を行ったり、現地のキーパーソンに会って協力を要請したりします。http://www.reddplus-platform.jp/足立さんが所属する地球環境部が現在手がける「REDDプラス」事業独立行政法人国際協力機構(JICA)地球環境部森林・自然環境グループ1987年  筑波大学第2学群比較文化学類入学1994年  国際協力機構(当時国際協力事業団)入社、TSUKUBA COMMUNICATIONS08TSUKUBA COMMUNICATIONS08

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る