TSUKUCOMM-33
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書きの紙を貼って、植林の重要性やプロジェクトで教えた技術の有用性を英語でプレゼンしていました。 彼女らはプロジェクトが始まるまでは、人の前に出て話すことなどなかったのですが、プロジェクトを通じて自ら植林や農業の技術を学び、試してみてその効果を理解し、当番制で説明するというトレーニングを重ねてきました。外部からただ教えるだけでは、技術の有用性や植林の重要性が伝わらないのですが、自分で実際に試し、比べ、見て観察し、発表にまとめてみると、心底納得して新しい技術を取り入れることができます。現地の人々が問題を理解し、必要性を感じて、主体的に活動に取り組んでいる。自らを大きく変えていける人々の可能性に感動しました。 途上国では環境が大変厳しく、すぐには目に見える成果が出なかったり、活動を持続、普及させていくための資金を確保することが難しかったりします。JICAの支援は通常、3~5年と期間が決まっており、その後の持続性が課題になることがあります。しかし、住民が次のステップに進むことができるように、私たちはJICA以外の国際協力団体に引き継ぐ、他の資金ソースを探す、途上国政府に働きかけるなど住民への支援が継続されるように努力をしています。— 在外勤務や国際出張が多いお仕事ですが、ライフワークバランスについて、これからグローバルに活躍しようという、特に女性にアドバイスはありますか? 国際的に働く仕事を選ぶ上で、家族との生活をどうするかというのは、誰でも悩むと思います。私の場合、約4年間の中国北京での在外勤務の際には、仕事のある夫は日本に残り、私が当時小学4年生の娘を連れて赴任しました。中国国内の出張の際に、娘を一人にしておくわけにもいかず、赴任が決まったときには、ちょうど定年退職をした父に同行してくれるよう頼みました。他の職員は母親に、別の人は夫に仕事を休職してもらうなど、人それぞれに家庭と仕事が両立できるよう工夫していました。100パーセント何とかなるという楽観的なことは言えないのですが、最初からダメな理由を積み重ねて、「だからできない」と諦めてしまうとそこで可能性は終わってしまいます。チャレンジしてみたら、意外にできてしまうこともあるし、やはり難しいとなれば、そこでペースダウンするなど見直すこともできると思います。— グローバルに働くために、どのようなスキルが必要だと思われますか? 共通言語でコミュニケーションができることは大前提として、私が重要だと思っているのは、相手の価値観や考え方を理解するための柔軟な視点を持つことです。日本で当たり前だと思っていることも、国や地域が異なれば通用しません。こちらが正しいと思うことを押し付けてもうまくいきません。ですから、その国の歴史、宗教、政治などの社会的背景や、彼ら自身の問題意識は何かなどをよく知って、相手にとって理解しやすく、同意できるような解決策を探るという心構えが必要です。 さらに、解決策が見つかって目的が定められたら、それを実現するための手段をたくさん持っておくこと。問題はわかったけれども何もしてあげられない、ということになってしまっては役に立てません。 国際協力事業は多くの専門家や関係者とチームで取り組みます。JICAはそのコーディネーター的な役割を果たします。途上国が直面している問題を解決するための道筋を探るには、プロジェクトの目的を常に意識しながら、多様な関係者の知識と経験を総動員し、多面的に検討することが重要です。そうすることで、無理だと思える難題にもアプローチすることができるのです。— 最後に本学学生にアドバイスをお願いします。 筑波大はいろいろな学科の授業を履修できるのがとてもよいと思います。私も学類を問わず周辺領域の授業やゼミに参加しました。同じテーマでも、社会系と国際系の先生が正反対の趣旨の解説をしていたりして、多様な見方が学べたのはとてもよかったと思っています。また、海外に行くと「日本ではどう?」と日本の知見を求められますので、日本についてしっかり学んでおくとよいと思います。TSUKUBA COMMUNICATIONS09TSUKUBA COMMUNICATIONS09

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