TSUKUCOMM-34
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生徒たちに、障害者としての自覚や人権意識をしっかり持ってもらおうと、日常生活での実体験をそのまま教材にします。点字ブロックの上に自転車が置かれていて困ったこと、歩きスマホをしている人にぶつかってしまったこと、そういった身近な出来事をきっかけに、社会の仕組みを捉えます。人々は、家庭環境や経済状況など、いろいろな要因で困難を抱えています。障害があることは、それらの社会問題にも気付けるようになる入口にもなるのです。町を歩き回って観察したり、テレビの映像で理解することが難しい生徒たち。世の中の動きを把握するには様々な工夫が欠かせません。その一つが聞き取り調査の課題です。夏休みにそれぞれの地元へ帰ると、地域の産業や歴史・文化について調べます。自分で立案し、施設や人々をできることも、一人ずつじっくり模型に触って確かめたり、語句のイメージがつかめるように、キーワードに使われる漢字が、他のどのような単語に使われているかなども説明します。ですから授業の進行にはどうしても時間がかかります。青松先生は、ポイントを箇条書きにしたプリントを配り、読むための時間を節約すると同時に、ディスカッションに力点を置いています。この日はちょうど、アメリカ大統領選挙の直後。日本の政治制度や報道の在り方などとも関連付けながら、全員が発言できるように質問を投げかけ、程よい緊張感の中で、授業は進みます。社会科の中でもとりわけ教材が少ないのが公民。青松先生は、大きな発泡スチロールの箱と木製の建物模型を抱えて、青松先生が教室にやってきました。箱のふたを開けると中には国会の議場のレプリカ、木製の模型は木片を組み合わせて作った国会議事堂です。国会の仕組みについて学ぶ中学3年生の公民の授業。もう一人の先生とのチームで8人のクラスを指導します。生徒たちは、通常の教科書、大きな文字の拡大教科書、点字教科書をそれぞれの視力に応じて使っており、読む速度もバラバラです。写真で見れば一瞬で理解本学には11の附属学校があります。それぞれの分野でわが国の教育をリードしており、全国でも有名な先生たちが大勢います。各学校で活躍する名物先生を紹介いたします。24VOL. 名物先生登場!附属学校の1970年 ‌奈良県生まれ1993年 ‌国際基督教大学教養学部社会科学科卒業1993年 ‌日本ユニシス株式会社入社1995年より現職2003~2005年 筑波大学大学院教育研究科障害児教育専攻(内地研修により)2008~2009年 交通エコロジー・モビリティ財団 視覚障害者誘導用ブロックに関する調査研究委員2011~2012年 公益財団法人共用品推進機構「TC173SC7WG1検討委員会」 委員 趣味はボーリングで、全日本視覚障害者ボーリング協会を立ち上げ、会長の要職を務めている。ただ国際会議出席など運営の仕事が増え、自らボールを投げる機会はめっきり減ってしまっているのが残念。筑波大学附属視覚特別支援学校青松 利明 教諭あおまつ としあきTSUKUCOMM Vol.3412

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