TSUKUCOMM-34
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憩いの場。校長先生とおしゃべりをしたり、ぬり絵などをして遊んでいきます。普段の教室にいるときとは別の姿も見せてくれます。 これには、保健室や図書室のような、子どもにとってのある種の隠れ家的な意味もあります。一見、どの子も明るく快活ですが、教科担任制の附属小学校では、たくさんの教師と関わりますし、6年間でクラス替えは1度だけ。また、運動会などでは明確に順位をつけ、授業でも課外活動でも真剣勝負をする校風です。そのため、人間関係に悩んだり、ストレスを抱えている子どもも珍しくありません。校長室は、そういった子どもたちが、教室以外で気兼ねなく長居できる場所でもあるのです。 どんなに忙しくても、子どもたちがやってくれば、仕事の手を止め、彼らの話に耳を傾け、一緒に遊びます。日ごろから、子どもたちの気を惹きそうなガジェットを集めておくこともきませんから、現場で試行錯誤を繰り返しながら、その時々の状況に応じた巧みなタクトさばきを身につけ、常に授業を改善していくことになります。それには、自分の知識や体験を活用しながら教師としての経験を積み、タクトを振る技をたくさん習得し、かつ、その技を適切に使い分けることが大切です。授業観察者、すなわち教育研究者の眼は、タクトを振る技の幅やその使い方を広げるための特別な視力を持っていなければなりません。■開かれた校長室 附属小学校の校長として、週に2日は校長室で過ごします。校長室というと、特別な時に緊張しながら行く場所、というイメージもありますが、この校長室には、休み時間になると、学年もクラスも関係なく、子どもたちが自由に出入りします。先々代の校長が開放して以来、校長室は子どもたちの師自身のコンディションや、教室の環境も絶えず変化します。褒めたり叱ったりという声掛けも、対象の生徒本人だけでなく、周りの生徒への影響も含めて考えなければなりません。授業のやり方に普遍的な最適解は存在せず、同じ授業内容でも、いつも同じように進められるわけではないのです。その場の状況を瞬時に判断し、適切にアジャストして、より良い授業に導くことが求められます。 この、アジャストするというところが、教師の腕の見せ所。いろいろなアイデアを駆使して、オーケストラの指揮者がタクトを振って調和のとれた音楽を奏でるように、教師の采配を通して生徒とともに授業を作り上げる、つまり、教育におけるタクトさばきが授業の成否を決めるのです。生徒が変われば、当然、タクトの振り方も変えることが必要です。 ただし、オーケストラと違って、授業は生徒を相手に練習することがでTSUKUCOMM Vol.3407

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