TSUKUCOMM-35
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に、ボールにいちばん力が伝わる位置があるのですが、これには手の長さ、バットの長さなどによって個人差があります。私の場合は、ボールが中に入りすぎて窮屈な打ち方になっていたので、もう少し前で当てようと、いろんなことをやってみました。すると、打つ体勢を作るのに、少し早めに動くと良い感覚がつかめたんです。 ただ、それには片足を上げますからバランスが悪くて、なかなかベストの位置になりません。でも、いい位置で打った時は、ものすごく飛ぶものですから、なんとかこれで確率を上げていくしかないと思って、ひたすら練習しました。片足で何分も立ったり、頭がずれないようにしたり、細かいことなんですけど、体得するのはきつかったです。それでも、うまくいった時の結果が最高に素晴らしいので、それをずっと追い求めてきました。永田●選手としてベストにこだわる気持ちをお聞きして、ワクワクしました。私にとっては、永遠に「王選手」ですから。チームにおける選手というのは、大学でいうと研究者にあたると思いますが、研究者が持つべき姿勢は、今おっしゃったことに近い、つまり最善の結果を目指し続けることです。共通の考え方が当てはまりますね。■名選手は名監督になれるか永田●教育者(指導者)あるいは監督は、個々の学生や選手の能力を引き出していくことが、さらに学長や会長のような運営責任者になると、組織全体をうまく統括することが求められます。選手(学生、研究者)、監督(指導者)、運営責任者が、それぞれ力を発揮して世界と戦いながら、良い結果を出さなくてはならないのは、大学も野球も同じです。お二人は、ともに、監督としても輝かしい業績を挙げておられます。指導者の立場になって、一番気を付けられたことは何でしょうか。王●選手たちの相手に対して向かっていく気持ち、勝利に対する執念を高めさせてグランドに送り出すのが、監督の仕事だと思っています。選手生活の中で、ほとんどの時間は技術を磨くために費やされます。だけど、表に出るのは戦う場面です。この時に、今まで積み重ねてきたものを、存分に発揮するには、闘争心や集中力、体調などいろいろなことが影響します。それらを選手にとって最適な状態に整えるんです。今は、ピッチングやバッティングなど、個々の技術コーチがいます。監督の仕事は、それらを一つに結集させ、勝ちに結び付けることです。また、監督のそういう思いを選手に気付かせる、この監督についていけば大丈夫だと思わせることも大事です。林●どんな選手でも必ず好不調の波がありますし、勝ち続けていると油断も出てきます。野球は団体で長いシーズンを戦いますから、メンタルやスタミナなども含めて、個々の選手のコンディションをよく見ながら、チーム全体としていつも勝てるように調整しなくてはなりません。日々の練習でも、コーチとも相談しながら、選手ごとに丁寧に説明や振り返りを行うようにしています。厳しいことを言うときもありますが、それ10 TSUKU COMM

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