TSUKUCOMM-35
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はむしろコーチに対してです。監督は、特に試合中は、できるだけポジティブな盛り上げ役になる方が良いですね。王●戦う意義というのもみんな受け止め方が違いますからね。技術的なレベル、集中の度合いもいろいろです。なぜ一生懸命やらなくてはならないのか、目的意識をしっかり持たせるようにしています。もちろん、自分のためであるのが一番ですけど、そういうことって当たり前のようでいて案外わかっていないんです。林●私は20代後半で選手を引退して、筑波大学でトレーニング学を学びました。当時はまだあまり知られていない学問でしたが、台湾に帰ってコーチになった時にはすごく役立ちました。30年も前に私が書いたトレーニング計画が今でも使われています。心理学的な方法も確立されてきて、モチベーションを上げるにも、一人一人の個性に合わせた対応が必要です。叱ることで伸びる選手もいれば、叱ると逆効果になってしまう選手もいます。ですから、野球以外の時間でも選手に関心を持たなくてはなりません。永田●「名選手、名監督ならず」とも言われますが、優れた選手は、指導者になった時に、知っていて当然だろうとか、自分と同じようにできるはずだ、という態度が出過ぎてしまうのかもしれませんね。王●あるレベルまで到達した人は、選手が苦痛になるほどの求め方をしてしまいがちです。私もその反省はあります。ただ私は一本足という特殊な打ち方で、練習も独特だったものですから、自分のようにできるという考えで選手にあたったことは一度もないですね。むしろ、私から見て君の能力としてはこれだけのことはできるはずだ、だから、もう少しチャレンジしてもいいんじゃないか、とそういう話をしました。林●スポーツには国民性や文化的な特徴も出ます。例えば、短距離ダッシュをすると、日本人は全力でゴールまで走りますが、台湾人はゴール手前で力を緩めてしまいます。台湾野球について言えば、そういう意識改革の教育も必要だと思います。王●野球では、走り切ればセーフ、そうでなければアウト、というのがはっきりしていますから、言いやすいかもしれませんね。瞬間の力の出し具合で、アウトとセーフは紙一重です。極端に言うと、力を抜いてくるか、一生懸命走ってくるかで、審判のジャッジにも関わるんです。全力を出している姿を見せないと、いい結果には結びつかないんだということがわかれば、変わるんじゃないでしょうか。永田●本人が気づくように導くことが大事ですね。■組織のトップとしての心構え永田●さて、球団や大学のトップとなると、個々の人員というよりは、チームやそれを支える人たちのことを考えなくてはなりませんし、社会に対していろいろな発信をする役割も担うことになります。この点で一番重要なことは何でしょうか。王●ファンの反応はストレートです。ファンが[鼎談]SPECIAL TALKTSUKU COMMSADAHARU OH王 貞 治HUA-WEI LIN林 華 韋KYOSUKE NAGATA永 田 恭 介TSUKU COMM 11

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