TSUKUCOMM-35
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■卒業間近の教室で あいにくの雨で、屋内での活動になった体育の授業。中学部3年と高等部の生徒たちが廊下でストレッチや足踏みをします。その場で体を動かすだけですが、息が切れそうな運動です。この合同授業は、もうすぐ高等部に進学する中学部の生徒たちのための予行練習でもあります。互いにすっかり打ち解けていて、チャイムが鳴ると、「バイバーイ」「またね」と声を掛け合って、それぞれの教室に戻っていきました。 中学部3年のクラスでは、5人の生徒を2人の担任で指導します。その1人が安達先生です。休み時間を挟んで、次の「造形」の授業では、卒業制作の準備とボタンアート、2つの活動が待っています。 4月にはクラス全員が高等部へ進学しますが、中学部卒業にあたって、記念となる作品をみんなで作ります。そのメインとなる材料が教室に届きました。安達先生が運んできたのは大きな切り株。以前、他の附属学校の子どもたちと一緒に合宿をした黒姫高原から持ってきた切り株です。これに修学旅行や演劇など中学生活の思い出のモチーフで飾りつけをしたり、自分の夢を掘り込んだ、楽しい椅子を作ろうという計画です。切り株を囲んで、これから始まる作品作りに期待が膨らみます。 一言に知的障害といっても、その内容も程度も異なる5人の生徒たち。積極的に活動に参加する子も、授業中もじっとしていられずに動き回る子もいます。安達先生は、一人ひとりの特徴を把握し、様子を常に気遣い、それぞれ適切に声をかけながら、臨機応変にクラスを切り盛りしていきます。 ボタンアートでは、大きなキャンバスに、みんなでボタンを糊付けして、大きな太陽の図柄を創っていきます。色とりどりのボタンは生徒たちの保護者がそれぞれの家庭から集めてくれました。昔、生徒のおじいさんが着ていたコートのボタンなど、大切な記憶が詰まったものもあります。色や大きさを見極めながら、貼る位置を決めていきます。だんだんとコツをつかみ、集中力も高まってきました。力強く明るい光を放つ太陽の完成まであと少しです。■理解し、尊重するまなざし 担任として毎日欠かさず発行しているクラスだより「サンシャイン」。日々の活動や出来事が写真とともに紹介されています。保護者に配布し、廊下にも貼り出しています。障害があっても、生徒たちにはそれぞれ得意なことや優れた面があります。それを生かしてみんなに輝いてほしいという願いを込めて、「サンシャイン」というタイトルをつけました。もちろん、ボタンアートの図柄もこのイメージを表しています。 教室の外の廊下には、習字や絵など、生徒たちの作品がきれいに展示されています。特別支援学校では、道具をうまく使えなかったり、壊してしまうことも多く、実習をするときには代用品で済ませる場合があります。しかし安達先生は「本物」にこだわります。例えば習字では、硯で筑波大学附属大塚特別支援学校安達敬子教諭PROFILEあだちけいこ•コーナータイトルをリニューアルしました本学には11の附属学校があります。それぞれの分野でわが国の教育をリードしています。各学校のユニークな先生や授業、行事などの活動を紹介します。一人ひとりの個性を生かして、 附属学校めぐり博物館学芸員資格、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・養護学校免許を取得。1983年~相模原市立田名北小学校(通常学級)、都立立川聾学校、都立中野養護学校、盛岡市立緑が丘小学校(通常学級)を経て、1997年より現職。幼稚部担任、小学部学部主事、中学部担任。2010年、お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科博士前期課程修了。 16 TSUKU COMM

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