TSUKUCOMM-35
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■サブカルチャーから思春期を捉える 昨今は中高年の引きこもりも問題視されていますが、その多くは思春期に発端があります。思春期を理解しようと、若者文化の観察・批評もしています。特に注目しているのが「オタク」と「ヤンキー」。どちらも、何かと揶揄されがちではありますが、現代の日本社会を語る上では欠かせないキーワードです。 今や「クールジャパン」として世界中で人気のアニメやゲームも、オタク文化の蓄積によって生まれました。ただ、そこに登場するキャラクターに疑似的恋愛感情を抱くというのが、オタクの特徴の一つです。現実離れした無垢なキャラクターが生まれる背景を探っていくと、それらを欲望の対象として扱うのは、思春期の倒錯したセクシュアリティに特有の、特殊な才能だと考えることができます。 ヤンキーというと「不良」をイメージするかもしれませんが、彼らの中にはタテ社会的なルールや行動主義といったある種の「軸」があります。筋を通す、家族を大切にするなどの価値観は、地域の活性化や災害時の復興支援活動においては大いに役立っています。一方、そのような仲間意識の強い集団内でうまくいかなくなると、アイデンティティを見失い、心のバランスを崩す傾向が強くなります。また、とにかく体を動かすことを重視するため、知識を得て深く考えることや、いわゆる格調の高い文化を否定してしまいます。このような考え方は通常、経済的に下層の社会でのみ通用するものですが、日本では、芸能界や政界を始めあらゆる階層に広がっていて、他の価値観との対立が生まれやすくなっています。■対話が持つ優れた治癒力 「オープンダイアローグ」 精神医学は最近まで、疾患の原因は脳にあり、薬で治療する、という内科的モデルで捉えられてきました。しかしこれには限界が見えています。脳に問題がなくても、人間関係や生活環境によって精神を病んでしまうことはしばしばあります。周囲との対話が断絶し、一人の世界に入り込んでしまうと、症状はこじれていきます。引主要著作「文脈病」 青土社 1998年、 「ひきこもり救出マニュアル」 PHP研究所 2002年「ひきこもり文化論」 紀伊國屋書店 2003年、 「生き延びるためのラカン」 バジリコ 2006年「ひきこもりはなぜ『治る』のか?」 中央法規出版 2007年、 「ひきこもりのライフプラン」(共著) 岩波書店 2012年他『オープンダイアローグとは何か』斎藤環 著+訳医学書院 2015年06 TSUKU COMM

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