TSUKUCOMM-36
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めざす男の会」が発足する際に、設立メンバーとして参加しましたが、そういう会が結成されるほど、男性は家庭科の教員免許を取得する機会すら限られていたのです。その会も契機のひとつとなり全国で男性の家庭科免許取得者・採用者が徐々に増えていきました。植村先生も、最初は社会科教員として教壇に立ち、附属駒場中・高校に着任してようやく家庭科の担当になりました。学校ではすでに製図室を調理室にリフォームして家庭科授業をしていましたが、常勤教員は植村先生が初めて。当初は、女性の先生を期待していた生徒たちにがっかりされたこともありましたが、今では中・高全体の家庭科教育を一手に担う、頼もしい先生です。■いつか必ず役に立つこと 調理実習はお料理教室ではありません。食材の性質や栄養バランスを理解すること、全体を効率良く進めるよう段取りを考えること、日々の生活を賢く過ごすための技術と知恵を習得する活動です。クレープ作りも、小麦粉や卵の科学的性質、生の果物からジャムができるプロセス、限られた時間内で全工程を完了させる計画、などなど学ぶべき要素は盛りだくさん。植村先生は、化学や生物など他教科の学習内容とリンクさせたり、クラウド環境を活用してコミュニケーションを図ったりと、学びの幅を広げる工夫にも取り組んでいます。 家庭科は食物・被服・消費生活・保育などの分野を含みます。実習としては、調理の他に裁縫もあります。最近は、ミシンのない家庭も珍しくなく、ちょっとした衣類なら買った方が安い場合もありますが、衣服がどんなパーツでできているか、体型や動きにフィットするための縫い方などを理解すると、試験問題を解くのとはまた違った納得感があります。一方、目下の課題は保育の授業。実際に幼児とふれあい、発達段階に応じて一緒に遊んだりおやつを作ったりする体験学習が求められています。しかしこれには近隣の保育園との連携が不可欠で、なかなか実現できないのが悩みです。 受験科目ではない分、成績をあまり気にせずに生徒と接することができるのが、家庭科の良いところです。生徒たちもリラックスして授業に臨み、回を重ねるにつれ、目に見えてスキルが向上し、手際も良くなっていきます。とはいえ生活技術はむしろ、意識しなくても毎日の生活で使うもの。社会に出て自立して、結婚や子育てを経験して初めて、その真価を発揮します。生徒たちが卒業して何年か経ち、家庭科で学んだことが役立っていると実感してくれる、植村先生はそんな日を心待ちにしています。 植村先生は、まだまだ全国でも珍しい男性家庭科教員の草分け的存在です。家庭科の免許をお持ちのまま、千葉県では社会科の教員でしたが、本校では家庭科で採用しました。中学校の調理実習では包丁の使い方から始まって、生徒が徐々に調理技術の習得ができるように計画が練られています。これは本校の文化祭で高校3年生が調理を行い、来場者に食品を提供する場面につながっていきます。また、先生は情報教育にも精通されており、校内では教育情報関連の分掌もお願いしています。きめ細やかな先生の指導は、とかく大雑把な教員が多い男子校の中にあって貴重な存在です。これからもよろしくお願いします。大野 新副校長家庭経営に参画できる男子をPROFILEうえむらとほる千葉県印西市出身。千葉県立薬園台高等学校、京都大学文学部卒業。千葉大学大学院で家庭科教員免許を取得。千葉県立関宿高等学校、流山東高等学校を経て、2006年より現職。現在は中学1年担任、「SSHメディア虎の穴」担当。高等学校「家庭基礎」(教育図書)編集協力者。マイクロソフト認定教育イノベーター。谷山浩子ファン。TSUKU COMM 11

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