TSUKUCOMM-36
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TOKYO」第1回の覇者となるなど、実力が注目されていました。この頃から、ダンサーになることを目指していたのですか? 実はずっと教員志望でした。小学生の時からサッカーをしていたので「教員になってサッカー部の顧問をする」という夢を抱いて、ならばその道のトップの筑波大学でとがんばって入学したんです。ところが、蹴球部に入部して間もなく、選手層の厚さに圧倒されて退部しました。部活から離れると友達とも疎遠になって、自分が体育専門学群にいる意味もわからなくなってしまい、大学に馴染めない時期が続きました。 そんな時に、「Realjam」というストリートダンスサークルに出会って、生活が一変しました。暇さえあればダンス、家にいてもみんなで振付用にDVDを見たりして。社会人になるまでの期間限定の学生時代、情熱をかけて没頭した証に何かしらの結果を出そうと仲間と決めました。そして挑んだ「BIG BANG!! TOKYO」の第1回大会で優勝、翌年の日本最大のダンスコンテスト「JAPAN DANCE DELIGHT」では予選を勝ち抜き、全国大会に進出しました。この時は、出場したことだけに満足してしまっていたので、さらに次の年は全国優勝をねらって、もう一度予選に出場したんです。 ところが、結果は予選敗退。学生チャンピオンとしての自負もあったし、その頃にはイベントにゲスト出演するなど注目されていました。プロとして活躍している周りのダンサーからも「絶対に通る」って言われていたのに、前の年には出場できた全国大会すら叶わなかった。 その結果を受け止めたときに、「学生時代の思い出作りみたいな甘い気持ちがあったのかもしれない。ダンスを続ける。絶対にダンスで飯を食えるようになってやる」と、そこで初めてダンサーになることを決意しました。教員から、ダンサーへと運命を変えたRealjamとの出会いについて詳しくお聞かせください。 蹴球部を辞めてから半年、雙峰祭の会場をぶらついていた時に、たまたま目に入った松美池ステージのチラシに誘われて、軽い気持ちで会場に行きました。そこには一生懸命、しかもすごく楽しそうに踊っている学生がいたんですよね。その姿を見ていたら「やってみたいな」と思って、それがRealjamとの出会いです。練習場所は学内の教室だというので、後日、体験入部することにしました。 今でも鮮明に、その日のことを覚えています。 Realjamはいろいろな学類、他大学からもメンバーが集まっていました。体を動かすことには自信はありましたが、体育専門学群の自分が他学のみんなと馴染めるだろうかという不安でドキドキしながら教室までの階段を踏みしめるように登りました。新しいことを始めるときの一歩って、何をするにも大切なことだと思うんですけど、まさにその一歩を踏み出した日でした。  教室に入って、レッスンをつけてくれる先生にあわせて、教室の端っこで踊った途端に不安がなくなりました。「これだ!自分はこれがやりたかったんだ」と直感しました。 仕事を続けていくうえで、大切にされていることは何ですか? ダンサーとして表現し続けるために、毎日、コンディションを丁寧に整えています。1日として同じ体調の日なんてないので、毎朝フラットな状態に体を戻すところからスタートして、自分の求めるダンスに近づける。その繰り返しですが日々新しい出会いや発見があって、今でも踊ることに夢中です。また、見た目や雰囲気からまだまだ誤解の多いストリートダンスの文化を社会的に認知してもらえるように、指導的な役割を期待されていると思っています。 「ダンス」って3文字の簡単な言葉ですけど、人生で大切なものを僕はずっとダンスから得てきたし、目標を失って孤独だった日々から抜け出せたのも、ダンスを通じて出会えたかけがえのない仲間と一緒だったからです。この経験は、新たな場所、チャレンジに向かうときの支えになっています。ダンスを通じて僕に訪れた幸福や感動を色々な人と共有していきたいと思っています。筑波大で学ぶ後輩たちにメッセージをお願いします。 ダンスを始めたきっかけは思いつきでした。でも何かをやりたいと思ったときにすぐに始めるのって難しくて、明日にしよう、来週にしよう、行けなかったからやめてしまおうって、つい思ってしまう。見えないそのラインを越えるのは勇気のいることだけど、その一歩で自分の人生が変わることもある。その先で「違うな」って気づくだけでもいいと思うんです。一歩踏み出す勇気、それが現状を打破する鍵になると思います。の振付をしたり、自らのユニットでパフォーマンスを披露します。たきっかけは、筑波大時代の挫折でした。PROFILEあち(あちわしんご)神奈川県横須賀市生まれ筑波大学体育専門学群卒業1982年2004年JAPAN DANCE DELIGHT vol.11 FINALISTBIGBANG!TOKYO 優勝DANCE FLASH 2位w-inds.、東方神起、倖田來未、3代目J SOUL BROTHERS、安室奈美恵、黒木メイサ、Cristal Kay、松下優也、板野友美など多くのアーティストのバックダンサーを務める。また、ZEEBRA氏が発足させたレーベルGRAND MASTERにSHOW GUNとして参加。一般社団法人ダレデモダンス「アドバイザー」兼「ダレデモダンス検定、資格認定員」メメント・モリ、「死を想え」という意味のラテン語。「その瞬間を大切に。感じたこと、インスピレーション全てが『自分』。」ダンスはとどめておくことのできない身体表現の連続。その儚さが魅力でもあります。TSUKU COMM 09

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