TSUKUCOMM-37
11/28

さに目をつけたところに、この授業のユニークさがあります。■外の世界に目を向ける ごく普通の生活の中にあるものや、当たり前のこととして行っていることについて、いったん立ち止まってよく考えてみると、知っているようで知らないことがたくさんあります。導入の授業では、自分の日常が世界規模での経済活動の一端を成していること、あるいは脈々と受け継がれてきた文化や慣習の延長上にあることなどに驚きます。一方、グローバル化が進む社会に育つ若者でも、外国人に対してある種の抵抗感や過度の気遣いがあり、なかなか交流ができないといった現実も浮かび上がります。 筑坂では、海外青年協力隊などの活動を経験した先生が何人もいることもあり、スーパーグローバルハイスクールの指定を受ける前から、生徒たちの海外活動に力を入れてきました。1年次で全員がカナダでの校外学習を行い、2年次以降は、東南アジアの国々でのフィールドワークや交流活動などに参加する機会が用意されています。グローバルライフは、こういった活動への布石にもなると同時に、海外での実体験をフィードバックする授業でもあります。校外学習を経て、日本について改めて考えたり、なんとなく遠い存在だった外国や外国人が身近なものになると、テーマの捉え方にも変化が現れ、学びが一層深まります。■グローバル人材の種を蒔く グローバル=英語を学ぶこと、というようなイメージがありますが、言語はツールに過ぎません。伝えるべきこと、伝えようという意思があれば、英語でも日本語でも他の言語でもよいのです。重要なのは国際的な視点を持つこと。その出発点は特別な知識や経験ではなく、毎日の暮らしです。一生活者として地に足をつけた考察と理解が、日常と社会や世界との関わりへの気づきに発展します。 また、自分の考えをしっかりと持ち、論理的に順序立てて述べるというトレーニングも重要です。他の人と違っていることを避けがちな世代にあって、堂々と議論をしたり、自分なりの意見を表明することが当たり前になるような環境づくりに、グローバルライフはもとより、他の教科や授業でも注力しています。 考え方や意識に変化をもたらすような気づきは、自力で得なければ身についたものにはなりませんし、その内容やタイミングはみんな違っています。グローバルライフは、授業としては1年次だけで完結しますが、実はその中で、生徒一人ひとりがいつか自分なりの気づきに出会えるように、いろいろな種が蒔かれています。そのような気づきの種は、プライベートな生活の中にももちろんあります。しかし、高校生が最も多くの時間を過ごす場所は、やはり学校。そこにできるだけ多種多様な種がたくさん蒔かれている方が効果的なのは言うまでもありません。 実際、2年次、3年次と進み、選択科目や卒業研究のテーマを決めるとき、多くの生徒が、1年次でのグローバルライフで学んだことをきっかけにしています。この授業は、将来の進路だけでなく、自分の歩んでいく人生や、未来の社会を考える上でも、生徒たちにとって大きな影響力を持っています。真のグローバル人材への土台を育む種が筑坂で芽吹き、世界のあちこちでとりどりな色や形の花を咲かせる日が、いずれやってきます。「グローバルライフ」という科目は、スーパーグローバルハイスクールに指定された本校における重要科目として開発されました。「家庭基礎」を元としたものですが、家庭科教員だけではなく他教科教員、外部講師も授業を担当し、「自分の生活と世界がどのようにつながっているか」という視点で行われます。「新しい授業をつくる」ために、先生方は何度も話し合いを重ねてきました。その甲斐あって、実感しやすい内容を取り上げた授業は生徒にとってとても魅力的らしく、楽しそうに生き生きと取り組む姿を微笑ましく感じます。生徒自身も、意識の変容に影響を与えた授業活動だったと振り返っています。「グローバルライフ」が、生徒にとって「世界」を考えるきっかけとなり、また今後の学びへのモチベーションとなるよう、さらに深化、進化することを願っています。岡 聖美副校長意識の変容を生む授業本科目の責任者 山本 直佳 教諭(左)未来をつくる種を蒔くTSUKU COMM 11

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る