TSUKUCOMM-37
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■地球の覇者、微生物 約46億年前の地球誕生から数億年後、最初に出現した生命体が単細胞の微生物です。多細胞生物が登場するのが約9億年前ですから、地球の歴史上、ほとんどの期間は微生物しかいなかったわけで、その間に何度も生じた大きな環境の変動にも耐え、多細胞生物が生まれても絶滅することはありませんでした。それどころか微生物は、植物にも動物にも、もちろん人間の体内にも入り込んで生き続けています。 最近注目されている腸内細菌もそのひとつ。つまり微生物は、人間が生きるために不可欠な役割を担っているのです。そのような重要な機能は、進化の過程で人間自身の遺伝子に組み込まれてもよさそうですが、微生物に頼る仕組みになっています。そう考えると、地球上の生物を維持し、支配しているのは微生物だということもできるでしょう。 微生物は目に見えないサイズで、空気、水、土、さらには普通の生物なら生きていられないような過酷な環境中にまで無数にいて、どんなに気をつけても接触は避けられません。病気の原因など好ましくない影響もありますが、むしろ微生物のことをよく知り、彼らの能力をうまく制御しながら共存する方が賢明です。そのための研究プロジェクトが進められています。■「集団」として微生物を捉える 一方、人類はその存在を知るずっと前から、発酵や醸造など、経験的に微生物を利用し、文明を築いてきました。顕微鏡ができて、1680年に微生物として認識されると、抗生物質など積極的に活用するようになりました。人類の発展には、微生物の恩恵を受けた側面があることは否めません。 微生物そのものも研究され、それぞれは単細胞ですが、単独で行動するのではなく、何億もの個体、しかもいろいろな種類の微生物が集まって存在していることがわかってきました。人間に例えると、異なる民族や人種、さらには犬ぐらいに離れた種までが、一つの集団に含まれています。それらは互いに助け合ったり、時には戦ったりしながらも、全滅するようなことはなく、集団を保っています。 このような微生物の集団を「バイオフィルム」といいます。フィルムとはいっても平面とはェーズを拓くたちTSUKU COMM 05

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