TSUKUCOMM-37
6/28

限りません。立体的な塊になるなど、環境に応じて様々なパターンを形成し、あたかも全体としてひとつの多細胞生物のような挙動を示します。植物の葉の裏や池の中などにヌルヌルしたものを見たことがあるでしょう。それがバイオフィルム。自然界のどこにでもいるのです。■高度なコミュニケーション 集団内での協調や争いは、どのように行われるのでしょうか。微生物たちは神経細胞ニューロンのようにネットワーク状につながります。そうして集団になると、細胞の外にいろいろな化学物質を放出します。これがヌルヌルの正体であり、彼らの「言語」です。ベシクルという粒子の中にメッセージを入れて花粉のように飛ばし、集団の外にいる細胞に届けることもできます。この化学物質を受け取ると遺伝子にスイッチが入り、特定の行動として現れます。遺伝子操作でその作用を阻害すると、集団が形成できなくなったり、環境変化への適応力が低下してしまいます。特に脳に相当する部分は存在しませんが、コミュニケーションによって集団の統率がきちんととれているときに、微生物はその力を発揮するのです。研究プロジェクトでは、このような微生物のコミュニケーションの仕組みを発見し、世界中のバイオフィルム研究に拍車をかけました。 微生物の言語には、英語のように異種間でも通じる共通語もあれば、特定の種類にしか通じないものもあります。マルチリンガルや、おしゃべりだけれど話を聞かない、周囲と同調しないなど、微生物にもいろいろな個性があり、それらがひとつのバイオフィルムの中で共存している様子は、多様性に富み、高度なコミュニケーションが成立している一種のコミュニティ。単細胞の小さな生物が何十億年も生き永らえてきた秘訣が詰まっているのかもしれません。■イメージング解析の力 バイオフィルム研究が進展する背景には、近年の解析技術の発達があります。従来は、細胞を壊して遺伝子を解析するという手法が用いられていましたが、共焦点顕微鏡を使って、聴HEADLINETSUKU COMMINTERVIEW集団微生物の挙動や微生物間の相互作用を解明するために、野村暢彦教授の指揮のもと、2015年から5年間に渡って本学で実施されている研究プロジェクト。科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業総括実施型研究(ERATO)のひとつで、6つの研究グループで構成され、大学院生も含め総勢50人ほどの研究者が参加する。JST/ERATO野村集団微生物制御プロジェクト06 TSUKU COMM

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る