TSUKUCOMM-38
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 数理物質系の近藤剛弘准教授は、東北大学、物質・材料研究機構、東京工業大学との共同研究により、水素吸蔵材料や電子材料として優れた特性を持つ、新しいシート状物質(ホウ化水素シート)の生成に成功しました。 炭素原子一層でできたグラフェンに代表されるような、一層から数層の原子からなる非常に薄い二次元物質と呼ばれる物質群は、高性能の電子材料や触媒材料の候補として世界中で活発に研究が行われています。また、種類の異なる二次元物質を組み合わせることで、様々な性質を発現することが分かっており、幅広い用途に応用できる可能性を秘めています。 ホウ素と水素のみで構成される二次元物質(ボロファン)は、グラフェンを凌駕する優れた電子材料特性や水素吸蔵特性を持つはずだという理論的な予想が報告されていましたが、生成には至っていませんでした。近藤准教授らは、二ホウ化マグネシウムという物質に含まれるマグネシウムの正イオンを水素の正イオンと交換することにより、室温・大気圧下という温和な条件でボロファンが生成できることを見いだし、「ホウ化水素シート」と名付けました。 ホウ化水素シートを既存材料と組み合わせることにより、資源・エネルギー・環境に関する様々な問題の解決に資する利用発展が期待されます。 生命環境系(山岳科学センター菅平高原実験所)の町田龍一郎教授は、福島大学との共同研究で、昆虫の翅は、発生の過程でどこから生えるかを解明しました。 昆虫は、種数において全動物の75%を占めており、地球上で最も繁栄している動物群です。その繁栄の秘訣としては、数ある節足動物のなかで唯一、翅を獲得し、空中への進出を可能にしたことが大きいと考えられています。しかし、翅が体の構造のどこに由来しているかについては、これまで答えが出ていませんでした。 町田教授らは、フタホシコオロギの卵が成虫になるまでの全発生過程を、走査型電子顕微鏡を用いて仔細に追跡しました。その結果、翅は発生の過程で胚の体節側面にあたる側板から生え、成長するに伴って背面に移動するものの、側板そのものは脚の最も付け根にあたる部分に由来することを突き止めました。 翅を羽ばたかせるには、しっかりした土台の上に固定され、かつ、翅の付け根は可動性で、しかも筋肉と繋がっている必要があります。今回の発見は、昆虫が既存の体の構造を改変し、理に適った仕組みで、翅を手に入れたことを示しています。昆虫の翅はどこから生えるかを解明水素吸蔵性能に優れた新材料を開発RESEARCH TOPICS町田龍一郎 教授近藤剛弘 准教授TSUKU COMM 19

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