TSUKUCOMM-38
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■辞書の役割 かつて、国語辞書は誰もが持っているものでした。電子辞書が広がってきた頃には、目的の検索語周辺にある言葉も学べるなど、紙媒体の辞書の方が望ましいという議論もありました。しかし、そもそも辞書は教材や読み物ではなく、不足する言語情報を速やかに提供するツール。その機能が充実していることが重要です。媒体が何かは問題ではありません。 辞書を引く時、調べたい単語がわかっているとは限りません。説明したいことをどう表現すればよいかわからない、ど忘れしてしまった言葉を思い出したい、というような場合の方が多いのではないでしょうか。しかも、調べる作業のために、本来の言語活動は多少なりとも中断されてしまいます。そう考えると、従来の辞書はあまり使い勝手のよいものではなかったと言えそうです。 パソコンやインターネットが普及し、辞書を手元に置く必要はほとんどなくなりました。モバイル機器も一般的になり、誰もがいつでもどこでもいろいろなことを手軽に検索できます。そんな中、存在感の薄れた辞書も、より高度で柔軟な言語支援ツールへ、着々と進化を遂げようとしています。■ひとりひとりのニーズに対応 言語、特に母語は、意味が通じればよいわけではなく、場面や目的に適した言葉遣いや表現技法を使いこなすことが大切です。その際、子どもと大人とでは、同じ事柄についてでも違聴HEADLINETSUKU COMMINTERVIEWる国語辞書に応える言語支援ツールへ言葉の意味を調べたり漢字を確かめるために辞書を引く、という行為はめったにしなくなりました。電子辞書ですら、もはや時代遅れの感があります。しかし一方で、言いたいことを適切に表す言葉が見つからなかったり、会話の途中で単語をど忘れしてしまったときに、助けてくれるツールはまだありません。日本語の文法や単語の用法を理解し、その時々の文脈に応じて瞬時に言葉を補ってくれる、そんな国語辞書の登場が現実味を帯びてきました。人文社会系矢 澤 真 人教授Makoto YazawaTSUKU COMM 05

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