TSUKUCOMM-39
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■物質の変化を視覚的に追う ナトリウム、マグネシウム、カルシウムの性質を調べる高校2年生の化学の実験。元素周期表にある1族と2族の元素について学んでいます。水酸化ナトリウム水溶液、マグネシウムリボン、金属カルシウムを使って、息を吹き込んだり、加熱したりしながら、物質が変化する様子を観察します。化学反応や化合物の構造そのものは目に見えませんが、指示薬の色の変化などから、段階ごとに物質の性質が変わっていることを確かめます。 実験の手がかりは、必要な器具や操作の手順が書かれたプリントです。古寺先生は自分で実験の演示はせず、各グループを回って進捗を見守ります。アドバイスもほとんどありません。操作自体はどれもそれほど難しくはありませんが、やることは盛りだくさん。てきぱきと進めなければ50分の授業はあっという間に終わってしまいます。薬品をこぼしたり、試験管を割ってしまうといったハプニングもありながらも、全てのグループが無事に実験を終えました。 この実験には、酸化、還元、中和といった基本的な化学反応が含まれています。物質は様々な元素から成っていて、化学反応によって別の物質へと変化することが実感できるように、ひとつの物質に対して連続的に操作を加えていくように、実験は組み立てられています。授業の最後に先生から反応式の簡単な説明があり、あとは、生徒が各自でプリントの空欄を埋めながら、実験の結果を確認します。■成功も失敗も振り返る 週3時間の化学の授業のうちの半分以上を実験に費やしてきた生徒たちは、白衣姿も様になっていて、ガスバーナーに火をつけたり、試験管を振る手つきも慣れたものです。それでも予想通りの結果が得られないことはままあります。どのグループでも同じ実験を行なっているはずなのに、結果が異なるというのはなぜでしょうか。 条件が同じであれば、同じ現象が起こるのが化学。そうならないとしたら、実験操作をする「人」の方に原因があります。つまり、やるべきことをやらなかった、あるいは余計なことをしてしまった、ということです。特に化学実験においては、ちょっとしたミスが事故やけがにつながります。ですから授業では、実験がうまくいったり失敗したりした要因を振り返ることにも重きを置いています。これは、実験ならではの考察です。 自分の行動を振り返らなければならない場面は、日常生活でもたくさんあります。化学の知識を身に付けることも大切ですが、実際にそれを生かした職業に就く生徒はわずかでしょう。しかし、振り返りをするトレーニングにもなっていると考えれば、化学を学ぶことには大きな意味があるのです。筑波大学には11の附属学校があり、それぞれの分野でわが国の教育をリードしています。各学校のユニークな先生や授業、行事などの活動を紹介します。化学を越えた学びを導く 附属学校めぐり筑波大学附属高等学校 主幹教諭古寺順一教諭12 TSUKU COMM

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