TSUKUCOMM-39
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■生涯にわたる発達 発達に関する研究は、従来、子ども期を対象に行われてきました。大人になるということは、発達を終えて人間として完成することであり、その後は加齢に伴って衰える一方であるという考え方が一般的でした。ところが1970年代以降の研究で、高齢期においても人は発達しているという理解が広がりました。心身の機能はさまざまで、年老いても向上していくものや、一度獲得すれば失われないもの、もちろん個人差もあります。 年老いたピアニストでも聴衆を魅了する演奏ができるのは、テクニックの衰えを選曲や表現力で補っているからです。失った能力を別の能力で代替しようとしたり、残された機能の中で自分にできるベストを尽くすというのは、高齢者に限ったことではありません。誰でも、困難を乗り越え、楽しく生きるためにいろいろな工夫をします。発達とは、前進、向上することではなく、今持っている機能を生かして、その時々の状況にうまく適応する力を持つこと。完璧を求めず現状を受け入れる、しなやかさを育む、ある意味で悟りの境地に至ることも大切な発達なのです。そう捉えると、生きている間に人の発達が止まってしまうことはありません。聴HEADLINETSUKU COMMINTERVIEW発達しつづけるそれぞれの「生きる力」を引き出すエンパワメント体の成長や知能が向上することだけが人の発達ではありません。自覚はなくても、人は生きている限り、日々、発達しています。それは、変化を受け入れ、環境に適応し、社会と関わりを持つことでもあります。ある地域や集団を長期間にわたって追跡するコホート研究という手法で、人々が生涯を通じてどのように発達するかを調査し、それに基づいて、活力にあふれる社会を維持していけるような仕掛けづくりに取り組んでいます。医学医療系安 梅 勅 江教授Tokie AnmeTSUKU COMM 05

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