TSUKUCOMM-39
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■地域全体を元気にする「仕掛け人」を 育てる 「人生100年時代」と言われるようになりました。それは、現役期間だけでなく、引退後の期間も長くなることを意味します。社会が変化するスピードもどんどん速くなり、歳をとってからも、新しい環境に対応していかなくてはなりませんし、社会もそれを期待しています。 新しいことに積極的にチャレンジする人とそうでない人とでは、その後、認知機能が低下する割合に明らかな差が見られます。けれども、歳をとると引きこもりがちになったり、何かを始める気力が失せていくケースは珍しくありません。そこで必要なのは、地域全体で新しいことにチャレンジできるような仕組みをつくり、みんながやる気になってくれるようにコミュニケーションを図ることです。 そのような地域のエンパワメントを担う「仕掛け人」には、地域の事情や特徴をよく理解した上で、仕組みづくりやコミュニーションを推進するためのスキルが求められます。相応の知識や経験を積まなければ務まりません。国内はもとより、開発途上国などでも、各地で適切なエンパワメント活動を展開できるよう、仕掛け人となる人材の育成に注力しています。■発達を支援する最新テクノロジー 最新テクノロジーも大いに活用すべきです。近年、急速な発展を遂げている人工知能(AI)やロボットは、人の機能を補ったり高めたりするという点で、エンパワメントにおいてもいろいろな可能性を秘めています。 ペットのように人の気持ちを癒すロボットや、介助者の身体的負担を軽減するロボットスーツといったテクノロジーは、すでに私たちの日常に入ってきています。現状では、その工学的性能の方に関心が向きがちですが、人間の繊細な感情に寄り添って、行き届いた支援を提供できるレベルにまで高度化すれば、それらを使うこと自体が人々をハッピーにすることでしょう。さまざまな機関と協力して、そのための研究にも取り組み始めています。 AIの普及により人間の仕事が激減するという予測があります。しかしながら、人の発達において人が関わらなくなるということはあり得ません。テクノロジーで代替される部分がある一方で、新たに人がやるべき部分も必ず出てきます。赤ちゃんからお年寄りまで、それぞれの人が与えられた環境の中でパワフルに生きている姿に感動しつつ、その力を最大限に引き出す研究はさらに続きます。聴HEADLINETSUKU COMMINTERVIEWPROFILE国際発達ケア:エンパワメント科学研究室教授。国際保健福祉学会会長、日本保健福祉学会会長、生存科学研究所理事、保育パワーアップ研究会代表、みらいエンパワメントカフェ主催。東京大学医学部保健学科卒、保健学博士。「いのちの輝きに寄り添うエンパワメント科学」「コミュニティ・エンパワメントの技法」など著書多数。研究室WEBは http://plaza.umin.ac.jp/~empower/anme/あんめときえTSUKU COMM 07

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