TSUKUCOMM-41
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●日本の技術力に憧れて首都ナイロビからバスで7時間ほど、ケニアで5番目の都市、エルドレット近郊の小さな村が私の故郷です。子供のころから車や家電など日本の製品が身近にあったので、エンジニアになって日本でさらに勉強するのが私の夢でした。モイ大学を卒業してから、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)というJICA(国際協力機構)の奨学金を得て、栃木県の足利工業大学の修士課程に入学しました。ケニアは資源に乏しく、国の発展には日本と同じく人的資源を活用することが欠かせません。ABEイニシアティブは、日本の大学院で学んだ後に日本企業でインターンシップを行います。将来的には、このプログラムで支援を受けた学生が母国の産業発展に寄与し、日本とアフリカの橋渡し人材になることが期待されています。日本については「高い技術力をもつ先進国」というイメージはありましたが、ほとんど何も知らないまま渡航しました。そこで驚いたのは、英語が通じないことでした。ケニアの公用語はスワヒリ語ですが、都市部や大学では英語でコミュニケーションをとるのは当たり前でした。ところが日本では普段の生活はもちろん、学校でも日本語ばかり。初めはとても戸惑いましたが、大学のサポートや日本語学習のおかげで、次第に生活に困ることはなくなっていきました。日常生活での高いレベルの顧客サービスや公共マナーの良さ、また、昔ながらの文化を大切にしながらも、経済や技術発展していることに感動しました。博士課程で筑波大学を選んだのは、日本のトップクラスの大学だからです。ケニアの発展に寄与するためには、技術者・科学者として確かな知識と手法を身につけることが大切です。また、英語で学べるプログラムは留学生にとっては大変ありがたいです。つくば市の環境も、自然に溢れていてとても住みやすいと感じています。●ケニアを知ってほしい 実家が代々農業を営んでいるため、私にとってつくばの畑や田んぼの風景はとても親しみを感じます。ケニアも平和で美しい国だということを知ってほしいと思います。 ナイロビ国立公園は、首都にある自然動物保護区です。高層ビルの立ち並ぶオフィス街から歩いて行ける場所で、野生のライオンやゾウに出合えるのは世界でも類を見ません。また、ケニアとタンザニアの国境沿いにあるマサイマラ国立保護区では、毎年10月から11月にかけて200万頭ものヌーの大群がケニアから川を渡り、餌を求めてタンザニアに移動します。他にも、たくさんの自然公園があります。 マサイ族など42の部族が暮らすケニアでは、部族によって言葉も文化も全く違いますが、「ハランベー」の精神が根付いています。日本語に訳すと、「力を合わせてがんばろう」という意味のスワヒリ語です。同じ場所にいる者なら、違いを越えて交流することができるケニア共和国広島の平和公園で。日本に来る前から、必ず訪れようと決めていたマサイ族のダンスジャンプナイロビ国立公園 写真提供:久野真一/JICAハランベー、力をあわせてケニアのために筑波大学には、100を超える国から、約3千人の留学生が訪れています。このコーナーでは、本学の留学生から、出身国の自慢の場所や風景、食べ物など、多岐にわたって紹介していただきます。

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