TSUKUCOMM-41
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筑波大では物理学を専攻したそうですが、最初から出版社への就職を希望していたのですか。当時の第1学群、朝永振一郎先生の後を継いだ研究室に所属していました。バリバリの理論物理ですね。その頃は、銀行などでもディーラーとして理系を採用するようになって、就職先の選択肢は広がっていましたし、バブル期で、希望すればたいがいの企業には行けそうな雰囲気でした。そんな中で、出版社に絞って就活していました。バブルとはいえ出版業界は買い手市場だったので、何社も応募しましたが、学研が最初に内定をくれました。それでそのまま決めたんです。創業時に東京教育大出身の人が多かったようですから、その流れもあったのかもしれませんね。入社して最初の半年ぐらいは歴史関係のムックシリーズを担当しましたが、それ以降、ずっと「ムー」の編集をやっています。雑誌という媒体自体が難しい時代ですが、研究家やライターの方々のおかげで続けてくることができて、来年で創刊40周年を迎えます。編集長になっても、ネタ探しにはいつも苦労していますし、取材をして記事を書く、という作業はずっと変わりません。かなり怪しげだと思いつつも、つい目を引かれてしまいます。毎月、これだけの誌面が埋まるほど、そういう話題は尽きないものなのですね。オカルト雑誌と言われることが多いのですが、UFO、超能力、古代文明、ツチノコなどなど、「ムー」で扱っている話題は、一つのカテゴリーでくくれるものではありません。科学的でないという批判も受けますが、科学だって自然科学だけではないし、物理と化学と数学とでも物事の捉え方が違います。極端に言えば、「科学的」が意味するところも人によってバラバラです。ムーは、いろいろな見方に基づいた「説」を紹介し、読者に考えて欲しいというスタンスです。それで最近は「哲学雑誌」と言っています。哲学はすべての学問の源。博士号だって、英語だと分野に関係なく「Doctor of Philosophy」ですよね。哲学には宗教学と思想と美学があって、そのうちの思想の中に科学という概念がある。日本の教育では哲学をちゃんと学ぶ機会がほとんどないんだけれど、こういうことを理解していないと、科学的云々の議論は不毛です。人間とは何か、人類にとって最も重要なこの命題には、ギリシャ哲学以来、まだ答えが出ていません。そこからさらに、命とは何か、死後の世界はあるのか、などの様々な問いが生まれるのだけれど、それも答えは出ていない。答えがない、のではなくて、まだわかっていないんです。だからいろんな説があって未解明の不思議を追う未解明の不思議を追うスーパーミステリーマガジン「ムー」といえば、隠れファンも多い人気雑誌です。オカルトや都市伝説など、非科学的と揶揄されがちな話題を扱っていますが、それはスタンスの問題。科学とは何か、考え抜かれた誌面が、読者の心を掴みます。株式会社学研プラス趣味・実用コンテンツ事業部 趣味・カルチャー事業室ムー編集部 編集長三上丈晴氏

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