TSUKUCOMM-42
11/28

副校長(左)と学芸発表会担当の細川李花教諭 本校は明治21(1888)年に東京高等師範附属尋常中学校として創立してから、昨年で130年を迎えました。昭和24年に東京教育大学附属中学校、昭和53年に筑波大学附属中学校となりました。明治以来の校訓は、「強く、正しく、朗らかに」で、この精神が今も脈々と受けつがれています。 本校の学芸発表会は、いわゆる文化祭ではなく、「学問と芸術の発表会」という質の高さを求めています。「真の意味で一人ひとりが文化を創造し、それをお互いの協力のもとに完成させる」という精神が第1回目から歴代生徒責任者の中に流れる共通の認識です。このような伝統が今も息づいており、大変見ごたえのあるものと評価をいただいております。学芸発表会は、発表団体の管理や当日の運営など全て生徒の手によって行われ、本校の教育活動の発信はもとより、生徒にとって大きな成長の場となっています。小林美礼 副校長学問と芸術の発表会げる文化の集大成会が選定したもの。タイムテーブル作成から、当日の受付や会場案内、各発表での説明まで、すべて生徒たちが行いました。生徒の自治を重んじるのは、附属中学校の伝統的な校風です。学発での発表も、無条件で参加できるわけではありません。各団体は発表内容をエントリーし、準備委員会による審査を経て、ビジョンや計画がしっかりしていると認められたものだけがプログラムに加わります。準備のために通常の授業時間を使うことはなく、昼休みや放課後に集中して作業を進めていきます。このように、運営する側も発表する側も、学発には相応のエネルギーをつぎ込んでいます。附属中学校では、必ず何らかの部・研究会活動に所属することになっており、2つの活動の掛け持ちもできるため、複数の発表に参加する生徒もいますが、とにかくどの生徒も快活で積極的。パワー不足の心配はなさそうです。■中学生としての成長学発のもうひとつの特徴は、中学校のみで開催することです。同じ敷地内に附属高校もありますが、合同の催しにはしていません。中学生と高校生が一緒になると、どうしても高校生がけん引役になるため、真ん中の学年にあたる中学3年生が曖昧な立場に置かれ、中学1年生が子供扱いされてしまいがち。中学生だけで運営することによって、3年生が最上級生としてリーダーシップを発揮することができると同時に、その様子に触発されて、1・2年生にも、次は自分たちが、という自覚が芽生えます。そのことが、どの学年でも傍観者になることなく、前年の振り返りや経験を生かし、みんなで知恵を出し合って学発を作り上げていくプロセスにつながります。まだまだ幼さも残る年頃ですが、そうやって、互いのことを知り、それぞれの能力をうまく引き出しながら、成長する機会にもなっています。■夢中になれる協働学習学発は、一般的な文化祭のイメージに比べると、模擬店も、エンターテインメント的な雰囲気もなくて、地味な印象を受けるかもしれません。しかしそれは、あくまでも日常の活動の成果を見てもらうための「学習発表会」であることへのこだわりの証です。学びのツールが多様化し、必ずしも学校に通わなくても、知識を得ることは可能な時代です。そんな中で、学校という場所で行う教育の意義は、協働学習にあります。附属中学校では、授業にしろ、課外活動にしろ、個人で行う活動はほとんどありません。議論しながら課題を解決したり、それに向かって頑張り抜くこと、そういった力を養うには、みんなで夢中になれる行事が大切。学発もその一つです。中学生ぐらいだと、男女が別々に行動したり、いつもの仲良しグループで集まることが多いものですが、ここでは生徒たち自らが、様々な場面で、そういったグループやクラスの枠を取り払い、みんなで協力できるための工夫をします。また、学業には直接関係しない活動であっても、目標が定まれば手を抜くことはありません。そんな、この世代ならではのピュアな情熱や正義感が素直に現れているところも、学発の魅力をアップさせています。11

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る