TSUKUCOMM-42
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●父のルーツがきっかけで私の故郷は、首都ブエノスアイレスから電車で40分ほど離れたアドログエという小さな町です。そこからブエノスアイレス大学の心理学科に通いました。海外の大学院に進学したいと考えていたところ、友人が文部科学省の奨学金を紹介してくれました。私の名前には、「ウエハラ」という日本名が入っています。父の両親は日本からの移民で、祖母の家族は今も沖縄に住んでいます。ですから、いつか、沖縄に行ってみたいと思っていましたし、メディアを通して知る日本人の社会行動についても関心があったので、色々な意味で自分の希望を叶えるチャンスだと思いました。将来は、精神疾患治療に役立つ研究をしたいと思っています。奨学金を得て進学先を決める際に、一谷幸男教授(人間系)が私の申請書類や研究計画に関心を示してくださり、ご自身の研究成果についても詳しく説明してくれました。心理学のバックグランドを活かして、脳神経科学や精神薬理学を学ぶことは、大きなステップアップに繋がると考え、筑波大に行くことにしました。1年目は研究生として、その後、人間総合科学研究科(博士前期課程)感性認知脳科学専攻に入学し、今は修士論文の仕上げの真最中です。●フレンドリーで個人主義のアルゼンチン人この3年間、日本各地を旅行しました。広島、京都、もちろん祖父母の故郷、沖縄県の与那原も訪れました。沖縄の人々はみんなフレンドリーで、言葉のわからない私を温かく受け入れてくれました。この点は、ラテン系のアルゼンチン人と少し似ているかもしれません。アルゼンチンでは、公用語のスペイン語がわからなくても、1週間もすれば一緒にごはんを食べる仲間くらいは簡単にできるでしょう。そんなフレンドリーなアルゼンチン人ですが、国の発展のために足並みを揃えることが苦手で、様々な社会問題を抱えています。移民が多いため、人種、文化、ルーツなどそれぞれ異なる背景を持つ多民族性と欧米文化圏の個人主義が相まって、みんなが違うことは当たり前です。でもそのことで、他者に対して「理解しあって、共に進むことができる仲間」という思いを持てないのかもしれません。その点は、日本と大きく異なる社会性だと思います。●ブエノスアイレスの文化アルゼンチンの自然は雄大です。ぜひ訪れてほしいと思います。世界遺産のロス・グラシアス国立公園にあるペリト・モレノ氷河は、南極大陸、グリーンランドに次ぐ大きさですし、イグアス国立公園には世界最大の滝があります。アジア以外の七大陸で最高峰のアコンカグア(標高 6,960.8 m)もあります。でも私が一番好きな場所は、首都のブエノスアイレス。イタリア、スペイン、フランスの影響を受けたヨーロッパスタイルの町並みに、劇場アルゼンチン共和国沖縄県与那原町のマンホールアルゼンチンから遊びにきた友人と隅田川でアルゼンチン自分のルーツを探る旅筑波大学には、100を超える国から、約3千人の留学生が訪れています。このコーナーでは、本学の留学生が、出身国の自慢の場所や風景、食べ物など、多岐にわたって紹介します。

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