TSUKUCOMM-42
8/28

書店に行けば様々な本が並んでいます。著者やタイトルを見て手に取ることが多いかもしれませんが、まず表紙に目を奪われるということも少なくありません。本にモノとしての個性を与えるのが「装丁」。電子書籍にはない力強さを生み出します。装丁家鈴木成一デザイン室鈴木成一氏本に「存在のリアリティ」を与える本に「存在のリアリティ」を与える装丁家というのは、あまり知られていない職業だと思いますが、どういう仕事で、どのような経緯で始められたのですか。なりたかったというよりは、ならされてしまったという感じですね。学生時代に先輩の手伝いで、鴻上尚史さん(劇作家・演出家)が早稲田大学で立ち上げたばかりの「第三舞台」という劇団の公演ポスターを作るようになりました。その流れで鴻上さんの第一戯曲集のデザインを頼まれたんです。在学四年の頃です。それが最初ですね。普通は戯曲集なんて注目されないものですが、鴻上さん自身が注目されたおかげで、多くの人に見てもらえて、装丁の依頼が来るようになりました。装丁は、表紙の図柄だけでなく、本文の組み方にまで関わります。また表紙も、紙質や厚みから加工、印刷方法まで、その本の佇まいにふさわしいものを選ばなくてはなりません。本というのは不思議なもので、日常の中にありながら、実用性と装飾性の両面を兼ね備え、ひとつの個性として主張します。手にとって愛でるような、工芸品にも似た、モノとしての奥深さも持っています。装丁の魅力もそこにあると思います。学生時代から、ということですが、筑波大はそういう活動がしやすい環境だったのでしょうか。学生の頃はデザインのバイトと授業の課題制作に明け暮れていました。グラフィックデザインというのは、とにかく紙に印刷しなく

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る