TSUKUCOMM-43
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17電子製品はますます便利になりますが、じゃまになるのが電源コードです。そこで期待されるのがワイヤレス給電。国としても、2030年代を想定した電波利用戦略として、(電力の)ワイヤレス給電の実現を目指しています。ワイヤレス給電とは、要するに、電気を電波に変えて発信し、その電波を受信して電気に戻して使うというもの。近距離低電力でのワイヤレス化、例えばスマートフォン用のワイヤレス充電器などですでに実用化されています。ただしこれは、電波を飛ばす方式ではなく、電磁誘導の原理を用いた方式です。それ以外にも、家庭やオフィス内なら、Wi-Fi並みに電気を飛ばすことは、今でも原理的に可能なようです。電波方式だと、長距離のワイヤレス給電が可能です。送電に用いる電波の周波数を高くするほど電波の直進性が強くなり、高効率の長距離送電が可能となります。これを利用するには、その電波を受け取って電気に変える装置が必要です。その装置は、整流回路(Rectier)とアンテナ(Antenna)が一体化したもので、両者の名前の一部を取って、レクテナ(Rectenna)と呼ばれています。これを使って、外部から入力された電波を直流電力に直接変換するのです。システム情報系の嶋村耕平助教と大学院生の溝尻征さんは、福井大学との共同研究で、303GHzという、現状では世界最高の周波数帯で動作するレクテナ回路を開発し、3mのワイヤレス給電実験に成功しました。実用化はまだ先の話ですが、宇宙太陽光発電やドローンへのワイヤレス給電などを目指す上で、この研究成果は一つの光明となります。ゴキブリに好感を抱いている人は少ないことでしょう。あのしぶとさと、すばしこさは並大抵ではありません。そこでよく言われるのが、「なにしろ3億年前からいる、生きている化石」だから、という誉め言葉(?)です。3億年前というのは、恐竜や哺乳類の祖先が出現する前の石炭紀という時代です。ところがそれは、ゴキブリに対する過大評価(!)だとする研究成果が発表されました。山岳科学センター菅平高原実験所の町田龍一郎教授と大学院生の藤田麻里さん(現 筑波大学社会連携課)は、国際共同研究グループ「1000種昆虫トランスクリプトーム進化プロジェクト-1KITE」の一環として、生きている66種の昆虫の遺伝子(ゲノム)を調べ上げ、昆虫類の系統樹を構築しました。その結果、ゴキブリ類が出現したのはおよそ2億年前のペルム紀のことで、現在の科が出そろったのは白亜紀(6600万~1億5000万年前)になってからだったことが明らかになりました。つまり、3億年前の「ゴキブリ」とされていた化石は、ゴキブリではなかったのです。ただし、恐竜がいた時代の白亜紀には、すでにゴキブリがいたわけですから、「生きている化石」という称号は残りそうです。この研究プロジェクトでは、ゴキブリも属する、より大きなグループ「多新翅類」の起源にも迫りました。その祖先が出現したのは、およそ4億年前であることがわかり、幼虫、成虫ともに陸上で生活し、しばしば土壌や落葉、樹皮下などに潜入する生活をしていたと考えられます。ゴキブリの起源は意外と新しかった!マイクロ波ワイヤレス給電の未来形 RESEARCH TOPICSおよそ4億年前にいたと推定される多新翅類の祖先開発したレクテナの本体(指でつまんでいるもの)と実験に使用した装置嶋村耕平助教

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