TSUKUCOMM-44
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■最適な方法でデータを解析する家電製品から人事面接に至るまで、様々な場面でAIが活用されるようになりました。それらは、スマートスピーカーやロボットといった姿で私たちと接していますが、その正体はアルゴリズム(計算方法)です。アルゴリズムはAI研究の一番の基礎になるものです。与えられたデータをどのように解析し、どういった情報を得るか、それはアルゴリズムにかかっています。同じデータでも、そこから何を知りたいかによって、使うべきアルゴリズムが異なります。AI研究自体は1950年代からあり、何度かの浮き沈みを経て、ようやく花開いた分野です。現在のように、具体的に役立つ形で使えるようになった要因には、インターネットの発達によって容易に大量のデータが集められるようになったこと、それらのデータの中から反復的に学習して解析する機械学習が可能になったこと、などが挙げられます。膨大なデータから特定の情報を引き出すことができるようになった一方で、医療データなど、数が少ない上に、取得するのにコストがかかるデータの中からも情報を見つけたいというニーズも出てきました。その場合には、すでにわかっている正しい情報と照らし合わせる方法(教師あり)や、与えられたデータから何らかの関係性を見出していく方法(教師なし)を使います。データの種類や解析の目的に応じた最適なアルゴリズムを見つけることが、AIの能力を向上させます。■複雑な世界をモデル化するAIを活用するということは、現実の世界で起こっている現象をサイバー空間に表し、アルゴリズムを使って解析し、その結果を再び実世界にフィードバックすることです。とはいえ、実際の現象は極めて複雑で、全てを忠実にサイバー空間に表すことはできません。ですから、解析したい事柄に着目してモデル化をすることで、個々の現象を取り扱います。モデル化の際には、現象を細かく分割してそれらの相互作用を解析します。例えば自動車のボディーの振動などを解析するには、ボディーを細分化し、各部分がどのように影響し合うかを方程式に表します。この方程式は汎用性があり、化学反応における電子間の反応などにみんなが使えるAIへアルゴリズムで現実世界とサイバー空間をつなぐ近年のAI(人工知能)の発展ぶりには目を見張るものがあります。囲碁ソフトなど、少し前まではまだまだ難しいと考えられていた技術が次々と実現する反面、近い将来には、人間が行っている仕事のかなりの部分がAIに置き換わってしまうという報告もあり、AI研究の在り方に関する議論も盛んです。そんな中、データ解析の性能向上に取り組みつつ、誰もが気軽に、安心して使うことのできるAIを目指して、研究を進めています。システム情報系櫻 井 鉄 也教授Tetsuya Sakurai

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