TSUKUCOMM-45
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 本校では文部科学省の「学校における交流及び共同学習を通じた障害者理解(心のバリアフリー)の推進事業」を4年続けて受託し、持続可能なインクルーシブ交流モデルの構築を目指した研究に取り組んできました。知的障害のある子ども達がスポーツや遊び、音楽や表現といった文化芸術的な活動を交流の手段とすることで、お互いを尊重し、対等な立場で楽しみ合える系統的発展的な交流学習プログラムの開発を目指しています。心のバリアフリーを目指して根本 文雄 副校長続けて 学生ぐらいになると、他人との違いを自覚するようになり、劣等感を持つ場合も少なくありません。ですから敢えて少し年上の、憧れの対象となる高校生と交流することで、自尊感情が生まれたり、互いに気兼ねなく接することができるのです。最初のうちは高校生にも戸惑いが見られますが、健常者が障害者を助ける、というのではなく、互いにアイデアを出し合い、対等に楽しむ場を作りながら、障害者への理解が深まっていきます。今年の桐陰祭ではバリアフリー化が一つの目標に掲げられています。これは、交流会の経験をきっかけに、生徒たちが発案したもの。大人になってから障害者と接する場面はなかなかなく、高校生のうちに、継続的にこのような機会を持つことは重要で、附属高校にとっても大きな意義のある活動と位置づけられています。こういった交流を続けていくことができるのは、「筑波大学附属」という共通項があるからこその強みでもあります。■それぞれの力を出し切る午後には、歌や楽器を合同演奏するステージ発表が行われました。ハンドベルや太鼓、鉄琴など、それぞれができる楽器をできる方法で演奏し、高校生たちもマラカスなどを持って合奏し、一緒に歌います。最初は少し緊張気味でしたが、だんだん調子が上がってきて、体も動き出します。中学部では1学期の音楽の授業で少しずつ練習を重ねてきたものの、附属高校の生徒も交えた合奏練習は、7月の交流会と当日のリハーサルの2回しか機会がありませんでした。それでも本番は大成功。ぴったりと息のあった演奏を、家族などたくさんの聴衆の前で披露し、大きな拍手と歓声が上がりました。これまでのステージ発表では、先生たちも加わって生徒たちのサポートをしていましたが、今回は、先生たちがそばにいなくても、高校生が十分にその役割を果たし、素晴らしい演奏となりました。短い時間であっても、互いのことを知り合い、密度の濃い交流ができていることの表れでしょう。■Believe~自分を信じて中学部のキーワードは「Believe」。自分や仲間の力を信じよう、という意味が込められています。附属高校との交流会は、普段の学校生活からさらに人間関係を広げ、たくさんの人に認められる機会です。「認められる、褒められる」経験は、誰にとっても自信につながるもの。家族や先生以外の人から認められることは、自分にもできる、頑張れる、という気持ちを育て、心を豊かにする、何よりのエネルギーになります。桐陰祭への参加を目標に、販売する作業製品も、毎年、少しずつバージョンアップしています。午後2時過ぎ、用意した作業製品は、ほぼ売り切れました。締めくくりに行われたまとめの会では、ステージ発表の出来栄えや、見学した企画の感想など、楽しい思い出がたくさん飛び出し、それぞれに力を出し尽くしたことがうかがわれます。一緒に活動した高校生たちともすっかり打ち解け、名残惜しい雰囲気の中、次の交流会での再会を約束して、生徒たちは帰路につきました。     副校長(右)と学部主事の杉田葉子教諭11

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