TSUKUCOMM-45
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 ベトナムでも有数の海岸リゾート地、ニャチャン出身のホアン・グエン・バオ・ゴックさんが日本に関心を持ったのは、高校2年生の時だった。日本のアニメ「ワンピース」を見て、仲間を信じ、力を合わせて困難を乗り越える若者たちの姿に引き込まれた。 それから、四季折々の自然の写真を見たり、勤勉な国民性を紹介する記事を読んだりするようになり、すぐに日本が大好きになった。 だから、日本語を専門的に学べるホーチミン市師範大学への進学に、迷いはなかった。将来は、日本語通訳になる夢を描いていた。 でも、大学に入って、その気持ちはしぼんでいった。日本語上達の助けになればとホーチミンの和食店でアルバイトをしたが、日本式接待には細かなルールが多く、ストレスがたまった。学校の授業でも、日本語の文法や敬語の使い方など難しいことが多かった。 それでも、根気よく、勉強を続けていたところ、師範大の先生から本学への留学を持ち掛けられた。「筑波大は有名で、自分には敷居が高く、戸惑いもあったが、頑張るチャンスだと決断した」と振り返る。1年間の留学資金は、バイト代などでまかなった。 つくばに来て驚いたのは、日本語の授業を受ける留学生たちが、うまい下手にかかわらず、堂々と日本語で自らの意見を話すことだった。一方で、来日間もない留学生から日本語を教えてほしいと頼まれ、助けてあげたいと感じるようにもなった。 世界にはいろいろな国があり、文化や習慣もさまざま。それぞれに良さがある。ベトナムのことも伝えたい。留学生との交流イベントなどを通じ、そんな思いも強まった。 こうした体験を、7月に開かれた「女子留学生日本語弁論大会~第17回茨城県大会~」で発表し、見事、最優秀賞に輝いた。 留学期間は1年間と短いが、日本語を教える先生の技術をベトナムに持ち帰りたいと、日々、真剣に授業に向き合っている。教えることにやりがいを感じたことで、将来の夢も通訳から日本語教師へと変わりつつある。 「ベトナムの発展のために、少しでも貢献したい」。つくばでの生活が、目を輝かせ、笑顔で力強く語るホアンさんの人生の転機となることは、間違いなさそうだ。ホーチミン市師範大学を休学し、今年4月に来日。夏休み中に河口湖を訪ね、富士山の姿に感激した。樹木が多いキャンパスがお気に入りで、紅葉の季節を心待ちにしている。後輩にひとことあなたが夢を持ち、努力を続けていれば、必ずチャンスがやってくる。そう助言してくれた高校の先生の言葉は本当でした。大学では、日本語の勉強で壁にぶつかりましたが、あきらめなかったからこそ留学できた。皆さんもどうか夢を持ち続けてください。母国発展に貢献したい筑波筑波日本語弁論大会で熱弁をふるうホアンさんホアン・グエン・バオ・ゴック さん人文・文化学群日本語・日本文化学類特別聴講生

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