TSUKUCOMM-46
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■キャリアを考えるということキャリアを考える、というと、将来、どのような職業に就きたいかを決めることのように思いがちです。しかし、移り変わりの激しい現代社会においては、今ある職業が10年後にも同じように存在しているかどうかも危うい上、終身雇用のような安定した就業スタイルも崩れてきており、キャリアの途中で転職や方向転換を余儀なくされることも珍しくありません。そんな中では、就きたい仕事を職名や肩書きで考えるのではなく、自分の性格や得意なことをよく理解し、その時々の状況に応じて、それらを存分に発揮できる機会を見つけることが重要です。興味関心のあることに限らず、より広く社会に接し、様々な経験を積み重ねて記録し、折に触れてそれを振り返って内省することで、自分に対する気づきが得られます。そういった活動を、小中学校から大学まで、さらには人生を通じて継続し、豊かな人生を送るための糧とすることが、キャリア教育の目指すところです。子供の頃は、行動範囲も狭く、自分の知っていることや好きなことだけで将来を考えてしまうものです。その段階で、自分の望む将来像を描けたとしても、他の可能性にも目を向けられるようにすることが、より柔軟に、そして本当に自分に合ったキャリア選択をするための土台になるのです。■小学校から始めよう来年度からの新しい学習指導要領では、小学校からのキャリア教育が規定されています。早すぎることはありません。キャリアを考えるための土台作りをすることが目的です。とはいえ、「キャリア教育」という教科はありませんから、校内での様々な活動や既存の教科教育の中に、その視点を盛り込んでいくことになります。学校での活動には、実はキャリア教育につながるチャンスがたくさんあります。教科において、伝記を読んだり、社会科見学に行ったり、ということはもちろん、例えば、係活動や文化祭などで、たとえ不本意であっても、与えられた役割を遂行することが新しい体験になり、そこから自分が得意なことや、優しさ、根気強さといった特徴に気づくきかっけとなります。それらは決して突出している必要はなく、些細なことでも自己認識を深めることが大切です。それには、教師や家族など周囲の大人のサポートも欠かせません。褒めたり促したり、ちょっとした声かけが気づきをもたらします。ですから特に教師には、人間系藤 田 晃 之教授Teruyuki Fujita「大人になったら何になりたい?」その問いに明快に答えられた人、また、その通りに実現できた人はどのくらいいるでしょうか。子供にとって、世界はまだまだ小さく、今の自分の関心事や生活と将来とは、必ずしもつながってはいません。その視野を広げ、成長の過程を通じて、自分ができること、得意なことを発見し、それを生かしながら、変化し続ける社会で生き抜いていく力を身につける。それがキャリア教育の真髄です。自分を記録し、発見する豊かに生きるためのキャリア教育

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