TSUKUCOMM-47
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 「大学生の時にしかできないことをする」 江原渉さんは本学入学後、そんな希望を抱いて、学生サークル「つくば学生農業ヘルパー(略称・農ヘル)」の活動に飛び込んだ。つくば市周辺の契約農家で農作業を手伝い、農業の現場を学ぶ学生団体で、20年前に発足した。現在は学生約50人が参加している。 大学の農業サークルは、自家菜園を小規模に運営するか、ボランティアで農作業を手伝うケースが一般的。ところが農ヘルは、農家から謝礼金をもらって活動している。 「ボランティアだと農家さんも気を遣う。学生も無償では、毎週土日に通うことなどは難しい。謝礼金をもらうと責任が発生するが、農家さんとの関係が長続きする。生活費に当てている学生もいる」と江原さんは語る。 契約農家は現在14戸。野菜類や果樹などを中心に栽培している。学生たちは苗の植え付けや収穫、販売まで農作物が商品として店先に並ぶまでのプロセスを体験できる。 江原さんは「農業の原点で、希望のある作業だ」と思う、苗の植え付けが一番好きだ。「(苗が育つ)3カ月後に(作業)結果が分かる」という農家の教えを胸に刻んでいる。 昨年1年間、自ら手を挙げて農ヘルの代表を務めた。農家と学生の希望を調整し、派遣日程を決める作業は大変だった。それでも、農業の未来に希望を感じた。「農家の高齢化など課題は多いけれど、農作業は気持ちいいし、農業は人間の生存に欠かせない。なくなることはない産業だ」と痛感したという。 かつては生物資源学類の学生がメンバーの大半だったが、最近では他学類の学生が半分を超す。また、男子より女子学生が多く、つくばや出身地で就農する学生もいる。 幼い頃から生き物が好きだったという江原さん。本学進学は、環境保護や生物と人間との関わり、生態系に配慮した農業の在り方などを学びたいと考えたから。専門分野を超えた幅広い学問領域を受講できることが魅力で、「選択に間違いはなかった」と言う。 江原さんは本学大学院に進み、畜産研究に取り組む予定だ。入学時は想像もしなかった進路だが、2年生で選択した動物資源生産学の授業で、人工授精など畜産の技術が野生生物の保護にも役立つと知った。将来は、国内で飼料の生産・供給から家畜繁殖までを行う循環型の農業実践にも関わりたいと願う。 学内、学外での学びと体験が、江原さんの将来を支える両輪となっている。Sho EBARA見られるものを何でも見ることが結局は得なんだと、これまでの体験で思いました。筑波大学は、学類学群をまたいでさまざまな授業が受けられます。大学時代にしかできないことに取り組み、自分の糧にしてください。後輩にひとこと契約農家でのトウモロコシの収穫作業農業には未来がある江原 渉さんつくば学生農業ヘルパー前代表生命環境学群生物資源学類4年入学以来、一の矢学生宿舎に住む。入居者の多くは留学生で、世界中の人々といつでも話せる環境がお気に入りだ。Sho EBARA

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