TSUKUCOMM-49
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14■新型コロナウイルス緊急対策のための大学「知」活用プログラム採択課題一部紹介COVID-19感染拡大防止のため、日本各地で外出自粛、休業ならびに営業時間の短縮が要請されてきました。これらの要請には公共の福祉および公衆衛生といった憲法上の規範が実現する可能性がある一方で、他の重要な憲法上の基本的価値である個人の自由を制限する側面があります。本プロジェクトは、①歴史、②比較憲法の視点から、公共の福祉・公衆衛生及び個人の自由の両立が可能になる憲法解釈を模索します。上記により今後の感染症拡大防止の議論に寄与することができます。第一に、歴史の視点から公共の福祉・公衆衛生と個人の自由の関係性を検討します。日本国憲法下における感染症対策の歴史的変遷を概観し、「公共の福祉」における感染症対策の位置付け、日本国憲法に「公衆衛生」が挿入された経緯を分析します。その上で、感染症対策と個人の自由の関係性に関する従来の議論を検討し、COVID-19対策への適用可能性を探ります。第二に、比較憲法の視点から、他国における感染症対策と個人の自由の憲法上の課題を検討します。Tsukuba Global Science Week(TGSW)2020においてオンラインセッション「憲法はいかにCOVID-19に対応できるか?」を開催し、フランス、スイス、米国の憲法研究者とともに、COVID-19への対応に関する憲法上の課題を議論します。上記を通して、歴史及び他国の現状を踏まえ、今後発生の増加が懸念される感染症を予防する際に保障すべき個人の自由を明らかにします。未曾有のパンデミック状況下での新たな日本国憲法の解釈を提供したいと考えています。COVID-19に対応するための憲法の在り方人文社会系 助教 秋山 肇本プロジェクトでは、「リモート」や「ディスタンス」等の概念が関連する作品を「ディスタンス・アート」と呼び、その形式・内容・影響などを分析します。COVID-19の流行が明らかにしたのは、在宅を強いられる災害が起こると、アートやフィクションを従来の形式で制作したり鑑賞したりといった行動が困難になるということでした。演劇や音楽など、従来複数人で行われてきたアートが成立し得ないこの状況は、COVID-19の再流行などに伴い、長く続くことが予想されます。また仮にCOVID-19の流行が終わったとしても、在宅を強いられる災害は何度でも起こり得ます。そのような未来を生き抜くためには、家に引きこもることが可能な社会の構築が必須ですが、そこで並行してアートやフィクションが進化していなかったら、社会は精神的余裕を失ってしまうでしょう。このような社会において、どのようなアートやフィクションが生まれているのか、またどのようにすればアートやフィクションを新たな形で創出できるのかを整理し、社会に発信することは、文化を生き延びさせる上で重要だと考えます。災害によってアートやフィクションがダメージを受けてしまうことは、長期的に見ると社会にとって大きなダメージになり得ます。以上のような理由から、本プロジェクトでは、リモート社会における創作プロセスを分析し、アートやフィクションが生まれた背景から社会像を考察することで、今後の「想定外」の災害にも対処できる「知」の新しい作り方を探っています。ディスタンス・アートの創出手法分析システム情報系 研究員 宮本 道人

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