TSUKUCOMM-49
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断を司るとされる前頭葉ではなく、中脳のドーパミンニューロンが、選択肢の価値情報を、それを選ぶための選択指令に変換していることがわかりました。こういった実験においては、サルにどんなタスクを行わせるかが、研究者の一番の腕の見せ所です。難しいタスクの方が、高次の脳機能を調べることができますが、結果の解析は複雑になります。できるだけシンプルで、求めるデータがピンポイントに得られるようなタスクのデザインが重要です。実験用のサルは頭数も少なく、長期間の飼育も必要です。実験者との相性もありますから、しっかりと準備をしなくてはなりません。■知能ロボットから脳研究へ脳研究の道に進んだきっかけは知能ロボットでした。もともと工学部機械科の出身。大学院で知能ロボットを研究しようと、計算論によって脳を理論的に理解しようとする研究室に入りました。しかし当時の技術では脳の機能を明らかにすることはできず、もっと直接的なサルの脳の研究へとシフトしました。ヒトではできない侵襲的な実験や遺伝子操作を用いた実験がしたいと考えたのでした。そうして取り組んだのがドーパミン研究。快楽物質としてのドーパミンが働く仕組みを解明しようとしましたが、実はドーパミンの働きはそんなに単純なものではないことがわかり始め、研筑波大学 医学医療系 生命医科学域認知行動神経科学研究室注意や情動、推論、学習、意思決定、意欲などの心理現象を実現する脳のメカニズムを解明することを目指して研究を進める。よりヒトに近い脳の構造を持つサルを用い、様々な認知行動課題を行わせた際に、脳がどうのように活動するのかを電気生理学的な手法を用いて調べるとともに、その活動を脳局所への薬物投与や電気刺激によって操作することにより、脳の活動が認知機能や行動制御に果たす役割の解析に取り組んでいる。(研究室URL: http://www.md.tsukuba.ac.jp/basic-med/cog-neurosci/index.html)

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