TSUKUCOMM-50
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■生物学から計算科学へもともとの研究テーマはバクテリアでした。系統樹とは異なりますが、遺伝暗号の進化を研究していて、進化にはずっと興味がありました。計算によって系統樹を解析する手法は、20世紀後半ごろから提案されていましたが、当時は計算機の性能が低く、DNA配列のデータも少なかったため、できることは限られていました。しかし、遺伝子についての解明が進み、高性能の計算機も登場して、系統関係を知るための手段として手軽に使えるようになりました。計算機や計算手法に精通していなくても、ソフトウェアは豊富にあるので、あまり苦労は感じません。物理学などに比べれば、計算量もそれほど多くはないものの、1回の計算には、スパコンを使って1~2日かかります。データ量や条件を変えながら、繰り返し計算しますから、なかなか大変な作業です。とはいえ、筑波大は生物学も計算科学も世界的にもトップレベル。その両方の研究者と協力して研究できるのは、大きなメリットです。単細胞生物でも、ヒトの100倍以上のゲノムを持つものも珍しくありません。その中には、繰り返し配列や意味不明の配列もたくさんあり、解析は複雑です。進化の過程で他の生物から取り込んだ遺伝子が含まれていることも多いので、遺伝子配列のデータベースと照合して、それらの配列の由来を明らかにすることが重要です。新しい配列が見つかれば、データベースに登録し、世界中で共有するのがルールです。■直感力も研究を前進させる大事な資質真核生物の祖先は、古細菌の一部の系統ではないかと考えられていますが、地球上に山ほどいる古細菌のほとんどは、これまで見過ごされてきており、培養もされていません。サンプルから生物を単離するのではなく、環境中に存在しているDNAを一括して取り出し、筑波大学 計算科学研究センター 微生物分子進化研究室地球上に生息する生物種のうち真核微生物に焦点を当て、その進化の道筋を解明するため、遺伝子(DNA)塩基配列やタンパク質アミノ酸配列などの大規模データを、スーパーコンピューターを用いて統計学的に解析し、系統関係を推測している。様々な自然環境からの新しい微生物の採取・単離や、より精度の高い系統解析法の研究にも取り組んでいる。これらの研究を通じて系統樹を遡り、最も原始的な真核生物の姿や遺伝子構造に迫ることを目指す。(研究室URL: https://sites.google.com/site/memicrobes/home)

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