TSUKUCOMM-50
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それでは最初から筑波大を狙っていたのですねそうなんです。宇宙センターを目指すなら、そこに一番近い大学へ進学するのがチャンスも大きいだろうと。もう一つの理由は、他の学群の授業を自由に受講できたことです。専攻は物理学でしたが、それ以外の授業も受けられるオープンな環境がありました。知りたいことがあればなんでも学ぶことができる、反面、選択肢が多くて悩むこともありましたが、それも含めて魅力でした。振り返ると、学生生活は楽しかったです。陸の孤島などと言われ、寂しい思いをしたこともありますが、宿舎生活などを通して、幅広い友人ができましたし、親元を離れ、落ち着いて自分に向き合って成長できる機会だったと思います。宇宙飛行士の訓練はすべて英語で行うので、筑波大で英語をしっかり学べたことや、留学生の友人と日常的に英語でコミュニケーションしていたことが、とても役立ちました。また、大学院ではプラズマ研究センターで研究したのですが、ここでは、たくさんの研究者が大掛かりな装置を使って一つの実験をするので、自分の担当する作業の位置付けを意識したり、全体のシフトを組んだりと、みんなで一つの仕事を成し遂げるプロセスも、すごく勉強になりました。これからの目標や、やってみたいことはありますか当面のことで言えば、今は海外からつくばへ訓練に来ることが難しくなっていますので、リモート技術を駆使して、できるだけ実際の装置の操作や空間認識に近い体験ができるような、新しい訓練方法を探っています。言葉や映像だけでなく、VR(仮想現実)技術を使うなど、これまでとは全く違うコンテンツ作りにチャレンジしています。宇宙飛行士からの評判も上々なんですよ。宇宙産業には民間企業も参入してきていて、将来は、宇宙旅行も可能になります。ただ、旅行とは言っても、飛行機や電車のように気軽で安全ではありませんし、宇宙環境は厳しいので、なにかしらの訓練が必要になるでしょう。決められたミッションのために選ばれた宇宙飛行士とは異なり、別々の背景や目的を持つ人たちに向けた訓練というのも考えていきたいですね。職業柄、宇宙生活の大変さは想像できるので、仕事として宇宙へ行きたいとは思いませんが、家族旅行なら行ってみたいです。特に若い人たちには、地上では得られない劇的な体験になるでしょうし、そういう体験をした人が増えれば、世界も変わるのではないかと思います。筑波大で学ぶ後輩に向けてメッセージを筑波大はいろいろな可能性を探ることができる場です。授業もキャンパスも開かれていて、望みさえすれば、知識も、人との交流も、どんどん広がります。自分の場合は、進路の希望がある程度決まっていましたが、そうではなく進学する人も多いでしょう。希望があっても、やってみたら何か違う、ということもあります。それが大事なんです。まだまだ知らないことはたくさんあるし、もっと自分に合うことが見つかるかもしれません。そのチャンスは目の前に転がっています。PROFILEはりがえまりあ1984年 福岡県生まれ2006年 筑波大学第一学群自然学類卒業2008年 筑波大学数理物質科学研究科修了     有人宇宙システム株式会社入社同社で訓練インストラクタとして活躍写真提供:JAXA写真提供:JAXA写真提供:JAXA

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