TSUKUCOMM-51
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05極めて複雑な地震のメカニズム 地震は、地表の岩盤(プレート)の移動や断層のずれによって生じる現象だということはよく知られていますが、私たちが実際に体験する地震は、どれ一つとして同じではありません。例えば、断層のずれといっても、断層の形状やずれの方向、大きさはさまざまですし、地球内部の構造によって地震波の伝わり方も変わります。 地震について、私たちが直接得ることのできる情報は、地表で観測されるデータだけです。実際に震源でどのようなことが起こっているのかは、そのデータをもとに推測するしかないのです。観測データからできるだけ正確に、地震の姿を捉えるには、震源での破壊過程(震源過程)を適切に表現するモデルと、解析手法が必要です。すでに、ある程度確立されたモデルや手法がありますが、高品質の観測データによって、実際の地震は、今まで考えられていたよりも複雑かつ多様性があることがわかってきており、ありきたりのモデルや手法では太刀打ちできなくなりつつあります。 そのアプローチとして、多くの研究者は、できるだけ精緻に地球内部の構造を調べてモデル化し、さらに、地震時に動く断層もできるだけ複雑なモデルにして、解析しようとしています。これは王道ともいえる研究スタイルです。しかしこの方法だと、扱うパラメータが膨大になり、資金やマンパワーを要する「力技」にならざるを得ませんし、そもそも全てを調べ、モデル化することは極めて困難です。分からないことを分からない として扱う だからといって諦めるわけにはいきません。提案したのは、分からないパラメータを無理に調べようとするのではなく、そのまま分からないものと認めた上で、新しい解析手法を構築する、という考え方です。 この解析手法が地震波解析の分野で画期的だったのは、完全な地球内部の構造を知らないことによって生じる誤差がどのようなものかを明確にしたことと、この誤差の影響を軽減する方法を提示した生命環境系 教授八木 勇治聴

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