TSUKUCOMM-51
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07て、地震の実像を解明することも重要です。 データ解析で求めるべき情報はたくさんありますが、一度の計算で多くの情報を得ようとすると、結果は逆に漠然としたものになってしまいます。また、スーパーコンピュータを使うようなスケールの計算になると、装置の順番待ちなどで、思うように研究が進まなかったりします。そういったことも考慮しながら、できるだけシンプルで、かつ効率のよい解析手法を練り上げていきます。再び地震のカタログ作りを目指して 現在取り組んでいる、もう一つのテーマは、地下600〜700kmの深いところで発生する地震の解析です。深い震源では、超高圧の世界で断層がずれるわけですから、莫大な摩擦熱が発生します。また、浅い震源では観測されないような、しかも、その原因がはっきりしない現象も見られます。そうなると、これまでの解析手法は役に立ちません。さまざまな深さの震源を理解できる、すなわち、さらに汎用性の高い解析手法を開発しようとしています。 地震は、地球にとってはごくわずかな変化にすぎません。でも、そのわずかな変化が私たちにとっては重要です。地震研究というと、予知や予測をイメージする人もいるかもしれません。観測網はかなり充実してきましたが、その知見をもってしても、それは至難の業。むしろ、起こったことをできるだけ正確に解析し、その結果が積み重なっていくことで、地域ごとの地震のパターンが見えてきます。それは、地震後の対策やレスキュー体制をあらかじめ考えておく上で大切な情報になります。 そのためにも、あらゆる地震を解析できる手法、そして、その解析結果から導かれる地震の姿を網羅したカタログが求められます。スタンダードとなる解析手法を開発し、地震のカタログを完成させるのが、研究者としてのライフワークです。筑波大学 生命環境系 八木研究室巨大地震や地下深部で発生する地震の発生メカニズムの解明や、そのための新しいデータ解析手法の開発を主なテーマに、地震に関係する様々な研究を行う。最近では複雑な大地震の詳細な破壊過程を安定に求めることができる革新的な手法の開発に成功、この手法を駆使して、大地震時に発生する未知の現象を明らかにすることを目指している。また、大地震前後の地震活動の変化や、深層学習を用いたスロー地震の同定等にも取り組んでいる。研究室URLhttps://www.geol.tsukuba.ac.jp/~yagi-y/PROFILE2002年に東京大学大学院理学系研究科で博士(理学)を取得。2002年〜2005年、研究員として建築研究所国際地震工学センターにて勤務し、JICA講師として発展途上国の研究生に地震学をレクチャーする。その後、2005年4月に筑波大学に助教授として着任。2012年〜2016年、文部科学省特別経費プロジェクト「巨大地震による複合災害の統合的リスクマネジメント」の代表を務める。2018年より現職。

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