TSUKUCOMM-52
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06聴してしまおうという流れがあります。確かに、その方が議論も早く進みますし、便利であることは否めません。それでも、その流れが日常生活にまで及んではいないことを考えると、人類には、言語の多様性を保とうとする本能的な力が働いているのかもしれません。全容は一人では解明できない 学問は、どの分野でも細分化が進んでいます。言語学も、例えばそのうちの音声学一つとっても、母音と子音とに分けられ、子音はさらに細かく分類されます。基本的な考え方や研究手法は共通でも、そのそれぞれに専門家がいて、互いに議論をすることは決して多くはないのが現状です。かつては、他の研究者の領域に踏み込むことをタブー視する風潮すらありました。 もちろん、研究者一人ひとりが個々の研究テーマを掘り下げ、独自の成果を出していくことは重要です。けれども、もっと大事なのは、個別の研究成果が、それ以外のテーマとつながる力をどれだけ持っているか、ということです。言語学全体を俯瞰し、その全容を明らかにしようとすれば、多くの研究者が連携しなくてはなりませんし、もしかすると、世代を超えて研究が引き継がれていくことも必要なのかもしれません。 同じように考えると、さらに学問全体を俯瞰するには、他の分野との連携が必然であることに気付きます。何かを探求するときに、他の分野がどのように取り組んでいるのかを知ると、新しいアプローチが見つかったり、共通の価値観が生み出されたりするはずです。それこそが学問の面白さでもあるのです。コミュニケーション・生物・地球・ 宇宙そして言語 私たちのコミュニケーションにとって不可欠な言語は、人類が作り出したもので、もともと自然界にはありませんでした。これがどのように生まれたのかを突き詰めていくと、人類の歴史を遡ることになります。さらに、言葉の概念を広げ、他の生物もそれぞれのコミュニケーションシステムを持っていることを知ると、生物学への関心も広がっていきます。また、人間が言語を学び理解する科学的な仕組みを知る上では、記憶や心理、さらに脳科学も重要な要素です。そうやって、生物から地球、さらにはTSUKUBA FRONTIER

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