TSUKUCOMM-52
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07138億年前の宇宙の起源にまで立ち返って理解することが、巡り巡って言語学の本質へとつながるのです。 言語学を専攻しようというときに、脳科学や生物学、その上、物理学や数学まで、一通りの基礎を学ばなければならないというのは、大きなハードルに感じるかもしれません。しかし、人間の言葉は、こういった背景の上に成り立っているのです。これは言語学だけでなく、あらゆる学問に当てはまることだと考えるべきでしょう。人間の営みは、自然との関わりを抜きにして捉えることはできず、その視点を持たないままに、狭い分野にのみ着目しても、深い学びは得られないのではないか。長年の言語学研究の末にたどり着いた発想です。大学でこそ、すべきこと これを具現化した教育プログラムが「地球規模課題学位プログラム(学士)」です。どんな学術分野も、人間(人類社会)と自然(地球システム)との間にあるものとして捉えることができます。自然資源の活用やデジタル化など、人類社会が地球システムに手を加えることによって生じる問題が地球規模課題ですが、地球システムの側からは、人類社会に対して直接的に語りかけてはくれません。ですから、人類社会がどう行動するかが問われます。こういった課題に取り組むには、特定の専門知を持ちつつ、他の専門知と結びつけて全体像を把握し、地球システムに価値付けをして、それぞれの分野で何をすべきかを見通し、差配できる人材が欠かせません。 人間の活動は、多かれ少なかれ、地球システムに本来は存在しない仕組みを導入することになります。大学で行われる研究の多くは、そういった仕組みを生み出すためのもので、そこに特化していくことはある意味容易ですが、同時に、人類社会として地球システムとの付き合い方も考えなくては、研究の方向性を見失ってしまいます。その両面に目を向けることは、大学だからこそのミッションです。地球規模課題学位プログラム(学士)国境を越えて地球全体に関係する複雑な「地球規模課題」を、「人間」と「環境」という大きな領域から捉え、それぞれを支える専門分野について、幅広い知識を身に付ける。課題全般を俯瞰し、自ら考え抜き、必要な情報・技術を、分野を超えて意欲的に求めていく姿勢を持つとともに、多くの選択肢の中から最適な解決策を意思決定できる人材を育成することを目指す。4年間の英語プログラム。URLhttps://bpgi.tsukuba.ac.jp/jp/PROFILE1956年東京生まれ。1976年サンケイスカラシップに合格し、仏国政府給費留学生として仏国に留学。専門は発話言語学。1984年博士号取得。CNRS研究員を経て、1986年4月より本学で教育・研究に従事。人文学類、文芸・言語専攻、大学院GP(IFERIの導入)、国際交渉力強化プログラム(GNP)、大学の世界展開力強化事業(TRANS)のプログラムリーダーを経て、現在地球規模課題学位プログラム(BPGI)リーダーを担当。

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