TSUKUCOMM-52
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08作家でもあり県庁職員でもありますね どのように両立させているので しょうか 両立という意識はあまりないんです。県庁に入庁する少し前から小説教室に通い始めたので、最初から両方ともあるのが普通でした。自分の中では表裏一体なんです。2020年に松本清張賞をいただいて作家デビューしましたが、県庁の仕事も、自分で選んだものでやりがいを感じていますので、どちらも頑張っていくつもりです。 県庁での仕事は、小説と直結するわけではありませんが、世の中のことを知ったり、人と出会ったり、いろんな感情に触れる機会が多いので、そういうことを敏感に受け止めることは、物語を書く上でも大切に思っています。それに、小説で扱っている中国の歴史って、ある意味、役人の物語でもあるので、人間観察的な面でも興味深く感じています。 作家デビューしてからは、ご依頼もいただくようになり、締め切りもあって大変ですが、作品のアイデアは尽きません。子どもたちが起き出す前の早朝の数時間が小説を書く時間です。場面場面で自分の役割を切り替えて集中できるというのは、学生時代に演劇をやっていたおかげでしょうか。演劇から始めて小説を書くようになったきっかけはどんなこと だったのでしょう 最初、英語のミュージカルをやっていて、それから日本語のお芝居もやりたくなりました。学内にはいろんな演劇サークルがあるので、あちこちに声をかけて、毎年1回みんなで集まって上演していました。当時から、歴史ファンタジーみたいな題材をやっていましたね。 本当は、演出とか脚本などの演劇関係の仕事に就きたかったんですけど、就職氷河期で、劇団の研修生募集なんかも全然なくて。それに、筑波大は私にとっては地元ですが、他の仲間は卒業とともに全国へ散らばってしまって、取り残されたような感じもありました。演劇って、脚本から照明や音響まであって、一人ではできませんが、そういうことも含めて全部一人でできることってなんだろう、と考えた時に「小説だ」と思ったんです。 小説教室には18年ほど通いましたが、なかなか芽が出なかったですね。それでも諦TSUKUBA ALUMNI小説家 茨城県職員千葉 ともこ氏埋もれた感情や出来事を物語に

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