TSUKUCOMM-53
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16 ティラノサウルスなどのティラノサウロイディア類は、恐竜時代の最後(白亜紀最末期)に繁栄した肉食恐竜としてよく知られていますが、その前に陸上を支配していた恐竜がカルカロドントサウルス類です。全長が最大で13メートルにも達し、ジュラ紀の終わりから白亜紀にかけて生態系のトップに君臨していました。しかし、白亜紀半ばに北半球から姿を消し、代わって、それまで小型だったティラノサウロイディア類が巨大化して捕食者の頂点に昇り詰めました。この交代劇は世界的に注目されているものの、化石記録が乏しく、これまでの研究は北米に限定されていました。 生命環境系の田中康平助教らの研究グループは、ウズベキスタン共和国の後期白亜紀(約9000万年前)の地層から見つかった恐竜の化石が、カルカロドントサウルス類の新種であること突き止め、「ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス」と命名しました。全長は7.5〜8メートルもあり、同国で見つかった肉食恐竜としては最大です。この地層からは、過去に小型のティラノサウロイディア類も見つかっており、アジアで両グループが共存していたことが初めて示されました。また、両グループの共存記録としては、世界で最も新しい時代のものです。 今回の発見により、カルカロドントサウルス類は少なくとも9000万年前頃まで強力な捕食者としてティラノサウロイディア類を圧倒しており、ティラノサウロイディア類の多様化・巨大化はその後に起こったことが明らかになりました。 現代のスポーツトレーニングでは、映像を用いて選手の運動を理解することが主流です。しかし、数式化した運動モデルでは、統計的・経験的な要素を排除することはできず、動作のコツを標準化することは難しいままでした。また、従来は個人の運動能力に焦点を当てた研究が中心で、格闘技など対戦相手からの力を受けるスポーツでは、運動のモデル化も困難でした。 システム情報系/ヒューマン・ハイ・パフォーマンス先端研究(ARIHHP)センターの山際伸一准教授は、柔道の映像を元にしたビッグデータを活用し、投げ技を成功させる直前の体勢を明らかにする手法XSM(Extraction for Successful Movement)を開発しました。 XSMでは、投げ技直前の投げる側と投げられる側の体勢について、その鍵となる要因(頭の高さや袖のつかみ方、足の位置など)をできるだけ多く選択します。また、成功と認められる動作を分類し、定義します。本研究では、柔道の世界選手権とワールドマスターズ大会における、投げ技が成功した781件の映像から、これらを組み合わせたビッグデータを構築しました。それらのデータにχ2(カイ二乗)検定と呼ばれる統計手法を適用し、成功直前の体勢と投げ技の種類との相関を求めることで、その投げ技が成功する直前の体勢を構成する要因を明らかにしました。 これにより、目的とする技を成功させるためのコツを引き出すための、新たなトレーニング理論を導くことが可能となります。さらに、この手法を利用して、対戦相手が技に入る前の癖を発見できることから、試合での戦略を練る際にも役立つと考えられます。RESEARCH TOPICSRESEARCH TOPICS柔道の投げ技を決めるコツをビッグデータで探る新種の大型肉食恐竜を発見!本研究で開発したXSMにより、投げ技を成功させるための直前の体勢がどのような要因で構成されているかを明らかにすることが可能となった。・・・ウルグベグサウルス・ウズベキスタネンシス(奥)の復元画(Julius T. Csotonyi 画) 同じ地層から産出するティラノサウロイディア類のティムレンギア(手前)よりもずっと大型の肉食恐竜であることが分かる。

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