TSUKUCOMM-53
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06聴学や老年看護学の専門家、図書館員、認知症当事者など、さまざまな人々との議論を重ねて作成しました。ただ、認知症の症状は個人差が大きい上、配慮したつもりの応対が当事者の自尊心を傷つけてしまうことも分かってきました。こういったことを反映し、より役に立つガイドラインへの改訂作業にも取り組んでいます。 認知症に限らず、病気になると、自分で本やインターネットを調べ、その膨大な情報量にかえって不安になってしまう経験は誰にでもあるでしょう。そんな時に頼りになるのも図書館です。新しいサービスとして期待されているのが、イギリスで実施されている「本の処方箋」プロジェクト。認知症診療にあたる医師やカウンセラーと連携し、認知症に関する直接的な情報だけでなく、関連する小説や絵本なども含めて、あらかじめ用意されたリストからその人の症状や心の状態、知りたい事柄に適した本を紹介するものです。日本の実情にあった本の処方箋を目指すべく、プロジェクトが進んでいます。人々をつなぐ場所 考えてみると、図書館というのは壮大な意味をもつ場所です。外国で書かれたものや、何百年も前に書かれたものでも、本という形になっていれば、現在の日本で読むことができる、つまり、本は、離れた場所や過去の時代を生きた人と、私たちとをつなげてくれるものです。一冊の本を通じてたくさんの人が結びつくことができる場所が図書館なのです。 インターネットが普及し、図書館不要論が議論されたこともありました。しかし一方で、居場所としての図書館が見直されています。従来のイメージを広げ、車に本を積み込んで各地を回る移動図書館を活用し、屋外で、飲食をしながら、などさまざまなスタイルで本と出会える場所づくりが進んでいます。高齢者が子どもに読み聞かせをしたり、案内役としてロボットを活用するといった、新しいサービスも登場してきました。 また、ヒューマンライブラリという試みも行われています。一人の人を一冊の本とみなして、その人の人生を語ってもらうものです。もともとは、障害者やLGBTQなどのマイノリティが、自分のことを理解してもらうための活動でしたが、認知症の人たちにも語れることはたくさんあり、そこから豊かな学びも得られます。そうやって、認知症の人もサービスの提供者になることができるのです。思い出すことが力になる 認知症の進行を防ぐ方法の一つに「回想法」があります。昔のことを思い出して言葉TSUKUBA FRONTIER

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